北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


利尻町定住移住支援センター 八木橋舞子さん(43)

開設5年目 求人、空き家情報発信*島内外の人つなぐ場に

【利尻】開設から5年目を迎えた宗谷管内利尻町の定住移住支援センター「ツギノバ」が、島内外の人を結ぶ拠点として地域に根付いている。旧沓形中の校舎を活用し、移住や定住の相談を受け付ける。求人や空き家情報を発信するほか、観光客にも開放している。センターを運営する一般社団法人の理事を務める八木橋舞子さん(43)に役割や今後の展望を聞いた。

―2020年7月の開設以来、ツギノバには約2万2千人が訪れました。
 「移住、定住に関する相談を来所、電話、メールで受け付けています。これまでに島内外から計約400件の相談が寄せられました。『どんな賃貸物件があるの?』『夏は昆布干しのアルバイトをするけれど、冬の仕事はあるの?』といった住宅と仕事選びに関する質問が多いです」

―求人情報も紹介していますね。
 「島では仕事も家も人づてに探すことがほとんどです。顔の見える関係がある島の良さでもありますが、知人の少ない移住者にとっては最初のハードルでもあります。ホテルスタッフや介護職員などの求人情報を施設内に掲示し、希望者には一覧表も送ります。直接企業とやりとりしてもらい、本年度は求人30件中、既に5件ほど採用がありました」

―空き家バンクとして物件情報も公開しています。
 「ツギノバのホームページに空き家となった住宅の間取りや修繕箇所をアップしています。求人情報も空き家バンクも、移住者と町民の『あったらいいな』という思いを具現化したものです」

―島民と移住者、観光客らが交わる場所になっています。
 「多い日では1日に約50人が訪れます。テレワークもできるインターネット環境やカフェスペースがあり、さまざまな目的で足を運んでくれます。宿題している子どもたちに大人が声をかけたり。偶然出会った観光客に島民が島を案内したり。知らない人同士が自然とつながっています」

―旧校舎を活用したスペースは趣があります。
 「技術室にあった机と椅子、黒板や卓球台も使っています。卒業生のおばあちゃんが子どもと孫の3世代で来て、懐かしいと涙を流して喜んでくれたこともあります」

―今後の展望は。
 「コロナ禍でテレワークが普及し、複数の拠点で生活する人も増える中、利尻に興味を持ってくれる人がいます。地域の歴史や文化を引き継ぎ、次の未来をつくるという思いで設立されたツギノバ。ここでたくさんの新たな交流が生まれるように、居心地の良い空間を作っていきたいです」
(菊池真理子)
 
*取材後記
 窓辺には日差しが降り注ぎ、セミの声や雨風の音もよく聞こえる。にぎやかに遊ぶ子どもたち、漁を終えて一息つく島民、サイクリング中に立ち寄る観光客―。取材でセンターにお邪魔する度、年齢や職業を問わず、さまざまな人が一緒に過ごす空間が心地いい。島ならではの柔らかな空気感が訪れる人の心をほぐしてくれる。
 
 やぎはし・まいこ 1981年札幌市生まれ、旧札幌篠路高卒。カフェなどの接客業を経て、2016年から3年間、利尻町の地域おこし協力隊員を務め、海藻を使ったアート「海藻クラフト」の普及に取り組んだ。ツギノバの開設当初からスタッフを務めている。 山本さんが取材の中で繰り返した言葉は「地域」だ。名寄高は地域住民が学校運営に参画する「コミュニティ・スクール」制度を取り入れており、学校運営協議会委員も務める。音楽を通して学校、地域を盛り上げる山本さんの活動から目が離せない。

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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