北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


まちなか保健室の発起人 石津友貴さん(52)

旭川で居場所ない10代女性を支援*気軽に悩み話せる場を

 居場所のない10代の女性を支援する事業「ガールズサポート まちなか保健室」で、養護教諭、スクールカウンセラー、保健師の計3人がチームになり、毎週1回、性被害や虐待、生理など女性が抱える悩みに向き合い続けている。旭川市中心部の平和通買物公園沿いにある精神科診療所「オズのクリニック」(8の8)で、昨年7月に取り組みを始めて8カ月。発起人で旭川市内の中学校養護教諭石津友貴さん(52)に活動状況や今後の展望を聞いた。

 

―開設から8カ月がたちましたね。
「当初は週2回でしたが、毎週土曜日に開くようになり、今年2月末までに計35回で延べ61人が訪れています。10代の女性だけでなく、活動に共感してくれる大人も足を運んでくれています」

―活動の中で感じた課題は。
「私の前任校の卒業生や、知人の紹介で来てくれる高校生はいます。飛び込みの利用は少なく、まだまだ10代の子たちに情報を届けられていないと感じます。知らない大人がいる場所に行くのは勇気がいることです。ただでさえ辛い状況にある中で、成長しようと一歩を踏み出そうと訪れてくれる人がいることはすごくうれしいです」

―「保健室」を開いたきっかけは。
「前任の中学校で、『学校には行きたいけど、教室には入れない』という生徒が集まれる場所を保健室以外に設けたことがありました。そこに来ていた子が、高校卒業後に自信を持って生きる姿を目の当たりにしたんです。思春期をうまく過ごせれば、自分の足で歩いて行ける。そこで、学校以外にも相談できる『まちなか保健室』を開きました」

―「保健室」を通して、10代女性に伝えたいことは何ですか。
「同世代だからこそ、うまく話せなかったり、立ち振る舞えなかったりすることがあります。学校は、思春期の子どもたちの特殊な場所でもあり、繊細な人間関係の上で成り立っています。人生の中で同年代だけで多くの時間を過ごすのは学生の時ぐらいですが、そこで自信をなくす子は多いんです。でも、世代が違う人とのやりとりはスムーズにできる。そんな子は珍しくありません。10代でうまく行かなくても、人生は終わりじゃないんだよと伝えたいです」

―今後、「保健室」をどのような場所にしていきますか。
「もっと敷居を下げて、気軽に立ち寄れる場所に育てたい。話したくない時は無理に話さなくたっていい。空き時間にお弁当を食べにくるだけでも、読書をするだけでもいい。駅のすぐそばに移転するなど、より訪ねやすい場所にするため模索を続けていきます」(聞き手・渡辺愛梨)

 

取材後記
「最初は定年退職したら始めようと思っていた」という石津さん。日々生徒たちと過ごすうちに「今すぐやらないとって、待ったなしの感覚になった」のだという。自分と同じ目線で、存在を否定せず、大変さをわかってくれる大人に巡り合うのは社会人だって難しい。でも「まちなか保健室」なら―。取材を終えて、学校を後にするとき、自分の足取りが軽くなっているのを感じて、そう思った。

 

いしづ・ゆき 1971年、旭川市生まれ。北海道教育大旭川校を卒業し、宗谷管内利尻町、同管内猿払村、旭川市の小中学校で養護教諭を務める。2021年から旭川市立中央中に在籍し、23年7月に「まちなか保健室」の活動を始めた。

 

(2024年03月25日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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