北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


ダチョウの自然ふ化*安心の抱卵へ環境整備


 旭山動物園にはダチョウの雌と雄が1羽ずついます。今年は自然ふ化でひなが3羽生まれました。4月中旬から両親が交代で抱卵をはじめ、5月末から6月初めにかけてふ化しました。親がかえすのを「自然ふ化」、ふ卵器でかえすのを「人工ふ化」といい、旭山では29年前の人工ふ化以来、ひなは生まれていませんでした。2015年に雄のライフルが来園し、もともといた雌のララサとの相性も良かったので19年から「自然ふ化」の試みを始めました。

 19年10月の「わくわく日記」でライフルの抱卵を報告しましたが、ダチョウは雄雌が交代で約40日間も抱卵しないとひながかえりません。ララサはあまり抱卵しなかったので、それには何か理由があるはずです。ララサが安心して抱卵できるような環境をつくるのが課題でした。巣の位置を変えるなどシーズンごとにいろいろと試しても、安定した抱卵が見られませんでした。「ダチョウの気持ちが分からないな。もうダメかな」などと思いましたが、諦めないで良かったです。

 ひなが生まれてからは、両親の警戒心が強くなりました。隣で飼育するヤマアラシを警戒し、以前は気にしなかったカラスやキジバトを追い払うなど、ひなを守るような行動をするようになりました。ダチョウのひなは小さく、親の体重の100分の1、およそ1キロでふ化します。初めは間違ってひなを踏まないかと心配でハラハラしました。案の定、足元のひなに気が付かず軽く踏むことがありましたが、ひなはそれでもたくましく成長しており、親子を見ていると毎日が新鮮です。

 ところで、ララサが抱卵するようになった工夫は何だと思いますか?

 今年の変更点は、いつも開けていた巣の横の扉を使用禁止にしたことです。アフリカのサバンナの開けた場所で抱卵する習性があるのに、扉が開いて外から巣が丸見えになるのが、安心できない理由だったのかもしれません。そうか、これだったのか。ごめんね。早く気がついてあげたかったと思っています。(ダチョウ・ヤマアラシ・ペンギン担当 田中千春)
 
(2022年7月18日掲載)
 
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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