どうほく談話室
持続可能なタコ漁 町に活気*苫前の漁師 小笠原宏一さん(36)

小さな個体を再び海へ 「リタコ」好評
【苫前】持続可能な漁業を目的に、水揚げの一部を海に戻す漁が町の漁業者で進められている。中心人物のタコ漁師・小笠原宏一さん(36)は2022年から「ReTAKO(リタコ)」のブランド名でネット販売を始め、好評を得ている。これまでの歩みを振り返り、展望を聞いた。
―リタコとはどういう仕組みなのですか。
「名称はリリース(放す)の頭文字とタコを組み合わせました。タコをとり、加工販売して得た利益に応じ、小さなサイズのタコを海に戻します。地元の北るもい漁協は2・5キロ未満を海に戻すルールを設けていますが、4キロ未満はほぼリリースしています。取り組み初年度にあたる22年度の年間約千件の販売件数を維持できていますので、資源保護の考えに一定の評価をいただけていると思っています」
―取り組みを始めたきっかけは何ですか。
「自分が小さい頃は、子供たちが外で遊ぶ光景が見られたり、小さなイベントが開かれたりしていました。人口も現在の倍の4千人以上いました。当時のにぎやかな雰囲気がなくなっていると感じる中で、自分にできることを考えた結果、漁師が持続的に食べていける状態にすることが大事だと気づきました」
―どんな経緯をたどってきたのでしょうか?
「19年に苫前でタコ樽流し漁をしている約30人全員で『漁業改善プロジェクト』を始めました。1日当たり、どのくらいの大きさのタコが何匹とれたのかデータを取り、漁獲量が下がった翌年は漁具を減らし、資源保護に努めるというルールを決めました。ただ、加工業者や卸先、漁協など関係者が多くいるので、既存の流通の形を変えるには至らなかった。それなら『個人でできることから始めよう』と考え、リタコを始めました」
―最近の取り組みを教えてください。
「タコのご当地ラーメンのレシピができました。札幌の人気店『MEN―EIJI』のプロジェクトの一環で、町や農家、食のイベント企画会社の協力もあって完成し、4月上旬から店舗で提供します。タコと鴨でだしを取り、麺には町産の小麦「春よ恋」を使っています。具のタコは吸盤の食感が楽しく、かむほどに味が出ます。苫前のイベントで提供することも考えています」
―抱負は何ですか。
「自分は生まれ育った苫前が好きなだけです。『漁村の躍動を食卓へ』と常々言っていて、その「躍動」を生み出すのは、漁師の仕事や漁だと考えています。どんどん新たな取り組みに挑戦して結果を出し、10年後、15年後を見据えて活動したいと思っています」(聞き手・須田幹生)
*取材後記*
「放して大きくなった個体を自分や他の漁師がとれば、地域の持続可能性につながる。もしくは卵を産んで次の世代のタコが生まれれば」との言葉が心に残った。決して大きくはない苫前町で、1人の若手漁師が自ら考え、周囲を巻き込み、海洋資源の保護に取り組んでいる。果たして自分は何ができるだろうか-。まずはリタコを食べながら考えたい。
おがさわら・こういち 1989年生まれ。羽幌高を卒業後、父と同じ漁師の道へ。資源保護を目的にブランド化した「ReTAKO」は全国から注文がある。YouTubeチャンネル「漁師たこーいち/北海道のひだりうえ」で発信を続けるが、多忙で更新できないのが悩み
(2026年04月06日掲載)
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