どうほく談話室
幌延町の問寒別室内楽団代表 阿部 由裕さん(26)

初の特別演奏会を昨年12月開催*音楽通し縁結び 人呼び込む
人口200人ほどの幌延町問寒別地区に千葉県鎌ケ谷市から移住した阿部由裕さん(26)は、「日本最北の室内楽団」と銘打って「問寒別室内楽団」を結成し、昨年12月、地元で初の特別演奏会を開いた。民泊施設「ウタラといかん」を運営し、交流人口拡大に貢献する。これからの展望を聞いた。
―問寒別室内楽団の町内のメンバーは4人ですが、特別演奏会には全国から60人以上のメンバーが集まりました。どうやって集めたのですか。
「4歳からバイオリンを習っていて、その時からの友人が賛同してくれました。それに民泊施設のお客さんの中に音楽をやっている人たちがいて、その輪が広がっていきました。一緒には練習できないけれど、みんなが問寒別地区に来たいと言ってくれました」
―集まった聴衆は約100人。手応えはいかがでしたか。
「クラシック曲のほか、オーケストラ向けに編曲した問寒別小中の校歌も演奏したので地域の皆さんが喜んでくれ、予想以上の反響でした」
―問寒別地区に移住したきっかけは。
「中学時代、北海道内を鉄道で旅しました。JR宗谷線に乗った時、この辺りはシャッター街で空き家が多かった。人がいないのはなぜだろうと考えました。地方の問題に関心が芽生え、都会の視点ではなく、生活者の視点で考え、意見を言えるようになりたいと思いました。高校卒業後、大学には行かずに問寒別地区に住み始めました」
―観光客が大勢来る場所ではないのに、民泊施設を開設したのはなぜですか。
「もうけることが目的ではなかったんです。ここに来た人にとって『あったらいいな』という場所を考えました。住宅を改造した宿は水道管や畳も傷んでいて、かなり改修しました。そこで『日本一しょぼいゲストハウス』というキャッチコピーでPRしました。秘境駅があることからライダーや鉄道ファンがやってきました。そのうちにお客さんが町内に住所を移し、スタッフになってくれ、今は5人で運営しています」
―これからどんな活動をしていきたいですか。
「生演奏は地域の皆さんが喜んでくれ、音楽でまちおこしをしてもいいんじゃないかと思っています。最近は移住したいという人から相談を受けることも。多くの人たちと縁を結び、人を呼び込むきっかけをつくっていきたいです」(聞き手・塩野洋)
*取材後記
19歳で遠く離れた過疎の町に移り住むのは、勇気と覚悟がいることだっただろう。両親は反対だったという。だが今、阿部さんは地域の人たちから頼りにされ、欠かせない存在になっている。仕掛けた特別演奏会には幅広い世代が集まり、それぞれの心に大きな感動を生んだ。過疎の町でも人をつなげば、こんなことができる。今後の挑戦に注目したい。
あべ・よしみち 1999年、千葉県鎌ケ谷市出身。2018年に幌延町問寒別地区に移住。19年に民泊施設「ウタラといかん」を開設、21年に現在の場所に移転した。24年に全国の音楽仲間に呼びかけ、問寒別室内楽団を結成した。
(2026年03月02日掲載)
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