北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


三国真澄(旭川・道新エッセー教室受講生)*小さい旅

 突然、増毛の秋の海を見たくなり娘と路線バス乗り継ぎの小さい旅に出た。

 旭川から留萌を経て約2時間半。特急も快速もないバスで、山間を抜けて増毛へ向かった。

 乗客は3人。途中からの客はほとんどなかったが、家並みに入ると買い物袋を両手に提げた年配の人たちと乗り合わせた。通学や通院など欠かせない生活の足となっている。考えるうちに留萌駅前に到着。10分程で増毛行きバスに乗り込み、37分でサケの遡上(そじょう)する暑寒別川河口に着いた。

 河口から少し離れた海に面した高台に、ホイッスル砲1門がロシアからの砲撃を守るように置かれている。よく晴れていたこの日の日本海は紺碧(こんぺき)の白波を立てていた。

 残り海猫(ごめ)がホッチャレをついばんでいる河口も、白波を立てている海も10年前と全く変わっていない。この場所で、夫とおにぎりを食べ、水筒のコーヒーを飲みながら老後の話をしたことを思い出した。懐かしく、少し涙が込み上げてきたのを抑えていると、「もうすぐバスが来ますよ」と娘の声が聞こえ、去りがたい思いでバスに乗った。

 増毛の市街地に戻り、地元酒蔵で酒まんじゅうやリンゴを買い、遅い昼食の海鮮ずしをおいしくいただき最終バスに乗った。

 夕映えの日本海を車窓からめでながら、往復5時間の路線バスの旅を終えた。

(2025年11月03日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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