北極星
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大槻みどり(富良野・カフェ経営)*おじいちゃんの血
幼稚園のお絵描きの時間、絵より文字を書くのが好きな私は、画用紙いっぱいに文章を書き、先生を困らせた。小学生の頃は、グリーン新聞という手書きの新聞を作って回覧していた。そんな時いつも「おじいちゃんの血だね」と言われた。祖父は某文芸誌の編集者をしており、自分でも刊行物を出していたようだ。
私が生まれた時には祖父は亡くなっていたので、会ったことはない。でも、おじいちゃんの血だね、と言われるたびに、その存在を近くに感じていた。
私の父は長野県松本市の出身。祖父は家庭を顧みず好きなことばかりやっていて、実家からも勘当されてしまった。実家は小さな飴(あめ)屋さんで、父はいとこの家に行くと飴を好きなだけ食べられたのに、それもできなくなった。そんな祖父だが変わり者の作家たちには慕われ、自宅にはよく作家が遊びに来ていたそうだ。
この秋、私は松本市を初めて訪れる。父の思い出に出てきたオンボロの小さな飴屋を検索すると、創業170年を誇るおしゃれな名店になっていた。飴を食べながら祖父に話しかけるつもりだ。「私も好きなことばかりやってるよ。おじいちゃんの血だもん、仕方ないね」
(2025年08月25日掲載)
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