北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


羽幌町の地域おこし協力隊員 行方和之さん(47)

北海道海鳥センターで活動2年目*海洋プラごみ問題 発信に力

 【羽幌】まちのシンボル、オロロン鳥(ウミガラス)など天売島を中心にした希少な海鳥の保護や保全、普及啓発活動に当たる羽幌町の「北海道海鳥センター」。ここを拠点に昨年春から活動を始め、2年目を迎えた町の地域おこし協力隊員、行方和之さん(47)に現状と将来の展望を聞いた。

 ―活動1年目を振り返って。
 「昨年4月に羽幌に移住し、海鳥センターだけでなく、環境省自然保護官事務所や、北大などの海鳥の研究者、天売島の森林再生や島の活性化に関わるたくさんの方々とつながりができました。自分自身と自然との関わり方をあらためて学んだ1年でした」

 ―どのような活動をしてきましたか。
 「生態系に悪影響があると言われる海洋プラスチック問題を発信しようと、島の海岸清掃への参加を広く呼びかけ、札幌などから約20人が参加してくれました。また、海鳥センターの活動を紹介する動画を作って交流サイト(SNS)で紹介するなど、『海鳥や離島に興味のない層』にいかに知ってもらうかを意識しました」

 ―活動を通じて見えた課題はありますか。
 「海岸清掃で集まったごみには外国語の書かれたペットボトルや漁具も多く、広い地域に向け問題を発信することが大事だと痛感しました。また、海鳥センターの来場者もコロナ前の水準には戻っていません。海鳥や島の認知度を上げていくことが一番の課題です」

 ―羽幌町へ移住を決めたきっかけは。
 「空知管内月形町のNPO法人職員として社会福祉に携わっていた際、美唄市の宮島沼に飛来する国の天然記念物のマガンを見に行きました。早朝に一斉に飛び立つ大群に圧倒され『鳥と関わる仕事がしたい』と感じたのがきっかけです。天売島が海鳥の楽園と聞き、2015年に妻と島を初めて訪れました。島の観光資源を磨こうと間伐材でサウナを作った人など、多くの魅力的な人たちに出会い、心をひかれました。ウミネコやウトウなど、季節ごとの海鳥たちに会えるのも魅力でした。町が地域おこし協力隊員を募集していると知り、『最後のチャンス』と思い切って応募しました」

 ―今後手掛けたいことは。
 「海鳥センターの活動と並行してですが、羽幌に宿泊施設をつくりたいと考えています。羽幌が離島や道北への『通過点』になっているのがもったいない。地元の人、観光客、研究者が集まって語り合い、幅広く交流できる『結節点』にしたいと思っています」(聞き手・森麻子)

*取材後記
 温和な笑顔とおっとりした話し方。しかし一度島や海鳥の魅力を話し出すと止まらない。「先週島に行って、ドクガにやられて腕が腫れてしまったんです」と苦笑いしながら、今は19日に海鳥センターで開く「海鳥フェスティバル」の準備に奔走する。羽幌に宿泊施設をつくる夢の実現にも余念がない。また海鳥の話を聞きに、センターを訪れようと思う。
 
 なめかた・かずゆき 1977年札幌市生まれ。専門学校を卒業後、河川測量補助のアルバイトを通じ自然保護に関心を持った。社会福祉のNPO法人職員として、引きこもり支援などに従事。羽幌町の地域おこし協力隊員として、昨春に着任した。
(2025年07月07日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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