北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


ハクガンと鏡*自分の姿を仲間と錯覚


 旭山動物園の「ととりの村」には、1羽のオスのハクガンがいます。園内ではよくお客さんの通路に出てきては、のんびり歩き回ったり、脇に生えている草をついばんだりと、自由気ままな姿を見せてくれます。

 そんなハクガンがこの春になってから、なぜかお客さんの出入り口のドアの前に居座るようになりました。朝も昼も暗くなってからもドアの前から離れず、私が近づくと鳴き声を上げていました。お客さんがドアを開けるたびに体がぶつかりそうになったり、外に出てしまいそうになったりするため、見つけるたびにドアから離れた場所に戻したりということを繰り返していました。

 ある日、ふとドアをよく見てみると、そこに付いている新しいアクリル板にハクガンの姿がくっきりと映っていることに気づきました。ハクガンはその「もう1羽のハクガン」と共鳴するように鳴き続け、そこから離れようとしません。今年の春、ドアが新しくなった際に設置されたピカピカのアクリル板に映る自分を仲間だと勘違いしていたようです。繁殖期であったこともあり、仲間のそばを離れず敵が来ると追い返そうとする行動をしていたのかもしれません。

 そこで、アクリル板をパネルで覆って見えなくし、代わりに鏡を付けた四角い箱型のスペースを作ってみました。すると、ハクガンはその鏡の前のスペースで落ち着くようになり、それ以来ドアの前には行かなくなりました。今では前のように気ままに歩き回り、人が近づくと鏡の前に行き鳴いたり威嚇したりしています。

 ハクガンは本来、群れで生活し縄張り意識も強い鳥です。今回の行動は、そんなハクガンの本能や習性を間近で感じさせてくれる出来事でした。毎日見ている動物たちですが、こうした新しい発見や気づきがあると、改めて飼育の仕事は面白いなと思います。(ととりの村担当 原田佳)

【写真説明】鏡の前でたたずむハクガン
(2025年07月07日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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