どうほく談話室
旭川市の野菜ソムリエ上級プロ 江刺誠治さん(50)
旬の青果紹介 28日から新連載*五感通し おいしさ伝えたい
旭川を拠点に市場の流通では手に入りにくい青果を販売する青果卸業「アミューズ」社長の江刺誠治さん(50)は、青果店の長男として育ち、北海道内で11人しかいない野菜ソムリエ上級プロの資格を持つ、道北きっての「野菜の達人」。北海道新聞では4月28日から、江刺さんに道北の旬の野菜や果物、おすすめの食べ方などを紹介してもらう新連載をスタートする。野菜ソムリエの視点から見た道北野菜の魅力などを聞いた。
―なぜ「野菜ソムリエ」を目指したのですか。
「私が20代の頃は、道内で珍しい野菜の供給が足りず、ホテルやレストランではわざわざ道外から取り寄せるところもありました。それなら自分で作ってみようと、農家だった祖父母から1棟のビニールハウスを借りて100種類の野菜を育てましたが、簡単に使ってもらえるものではありません。そんな時に野菜ソムリエの資格を知り、体系的な知識を身につけ販路拡大につなげようと、勉強を始めました」
―野菜ソムリエ上級プロには、どのような知識が問われますか。
「資格は『ソムリエ』『プロ』『上級プロ』と3段階ありますが、野菜の品種や栄養、鮮度の見分け方など基本的な知識は『プロ』までです。上級プロは、面接試験があり、知識を使ってどう社会に貢献するのかが問われます」
―資格はどう生きているのでしょう。
「道北には新しいことにチャレンジしたいという意欲ある若手農業者が多くいますが、どんな野菜をどう売ったらいいかわからない人も多くいます。私は消費者に必要とされる品種やサイズ、反応を生産者に伝え、販路を確保する役割。資格取得で得た知識を生かして、八百屋の社会的な地位を上げることが最終的な目標です」
―道北の野菜栽培の可能性は。
「道北地方は比較的小さな畑で育てる農家が多く、手間のかかる野菜を丁寧に育てるのに向いています。また、寒暖差がある気候は、野菜の甘みに大きく影響します。全国的に見ても道北産の野菜は優れた面が多いと思います」
―新連載で伝えたいことは。
「野菜は普段から口にするものですが、保存の方法一つとっても知られていないことが多くあります。ソムリエとして培った体験や五感を通し、おいしく食べきる方法を伝えたいと思います」
(聞き手・渡辺愛梨)
*取材後記
江刺さんの青果店を訪れると、大型量販店では手に入りにくい野菜や果物を求め、買い物客がひっきりなしにやってくる。常時200品目を取りそろえているといい、江刺さんが生産者の元に足しげく通った成果が見て取れる。時には畑のトマトの香りに誘われ、生産者の自宅に飛び込んだこともあるという。新連載の伴走者として、プロの五感を伝えたい。
えさし・せいじ 1974年、旭川市生まれ。旭川北高卒業後、北海道教育大旭川校で英語を専攻。大学4年で実家の青果店に就職した。2011年に「野菜ソムリエ上級プロ」の資格を取得後、12年に「アミューズ」を起業した。
(2025年04月14日掲載)
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