どうほく談話室
枝幸高総合文化研究部部長 樋口侑菜さん(17)
オホーツク文化や動植物の調査*遺跡から発掘 大きな感動
【枝幸】枝幸高の「総合文化研究部」は、遺跡の発掘や動植物の調査に取り組む、道内でも珍しい部活動だ。町の博物館「オホーツクミュージアムえさし」の協力も得ながら、国内最大級のオホーツク文化の遺跡がある地域ならではのさまざまな郷土研究を展開している。部長の樋口侑菜さん(17)に活動内容や魅力について聞いた。
―活動の目玉に遺跡の発掘がありますね。
「夏休み期間中の3日間、町内の目梨泊(めなしどまり)遺跡で行われる発掘作業に参加しています。ここは8~9世紀のオホーツク文化期後期の遺跡で、海洋狩猟民オホーツク人の暮らしの痕跡が数多く出土しています。私たちのほかにも毎回、道内外の博物館や大学から調査に来る専門家の先生たちもいて、一緒に作業していると、地元に素晴らしい遺跡があるんだと実感します」
―発掘作業には専門的な技術が必要なのでは。
「作業の前に3、4日間、オホーツクミュージアムで高畠孝宗館長から事前講習を受けています。埋蔵品を傷つけずに掘り進めるため、移植コテや剣先スコップの使い方を教わります。たくさんの土器が出土するため、年代別の土器の文様の特徴や見分け方も学びます。遺物が見つかった場所を正確に記録できるよう、測量機器の使い方も教わりました」
―実際に発掘作業をやってみてどうでしたか。
「土器のかけらが出土して、そのかけら同士がつながった時は感動しました。黒曜石の塊が出てきたこともありました。この遺跡からは黒曜石の矢じりがたくさん見つかりますが、一つ一つが薄く鋭利に加工されていてオホーツク人たちの技術の高さに驚きました。発掘中は雨が降ったり、風が強かったりとつらいこともあるのですが、遺物が見つかった時の感動のほうが大きいです」
―総合文化研究部はいつできたのですか。
「2013年に当時の枝幸高の社会科と理科の先生が顧問になって創部したそうです。遺跡の発掘調査に参加したのは18年からで、最初の年に総合文化研究部の先輩が、金で覆われた刀装具と刀を発見して、全国的にも注目されたと聞きました」
―発掘作業以外にはどんな活動がありますか。
「町の文化財(天然記念物)に指定されているエゾサンショウウオの生息地調査があります。胴長を着て沼に入り、卵のうを探します。沼は胸までつかるくらいの深さの場所もあって、足をとられそうになりました。でも自然と一体になったような感じがして楽しかったです。ほかにも高山植物の植生調査や外来種ウチダザリガニの駆除などをしています」
―この部活の魅力は。
「暮らしているだけではわからない枝幸の良さを発見できることです。すぐ近くにカモメの繁殖場所があったり、オオワシを観察できたり。遺跡に身近に触れられる環境もとても貴重なんだと気付かされました」(聞き手・川村史子)
*取材後記
かつては多くの高校にあった郷土研究部。だが、昨年11月に旭川で開かれた第59回全道高校郷土研究発表大会の研究部門にエントリーしたのは枝幸高のみだった。関係者によると、ほかに活動しているのは旭川龍谷高だけだという。
枝幸高で郷土研究が続けられているのは、オホーツクミュージアムえさしによる支えが大きい。遺跡の発掘調査は今夏もある。オホーツク文化に関心のある学生さんはぜひミュージアムに足を運んでみてほしい。
ひぐち・ゆな 2007年、枝幸町生まれ。枝幸高総合文化研究部に入部したきっかけは、中学生の時に町広報誌で目梨泊遺跡の発掘調査の記事を読んだこと。趣味は読書。将来は図書館司書を目指している。
(2025年03月03日掲載)
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