どうほく談話室
旭川市立大助教 五所卓子さん(46)
依存症当事者へ 対話の場提供*悪い習慣 変える気づきに
アルコールやギャンブルなどの依存症に悩む人が回復を目指す旭川のグループ「明日(あした)の会」。2023年8月から月1回会合が開かれ、当事者や家族に加え、専門職ら支援者も参加する。設立メンバーの一人で、旭川市立大助教の五所卓子さん(46)に、活動の狙いや今後の展望を聞いた。
―依存症について教えてください。
「アルコールに加え、ギャンブルやゲームの依存症も世界保健機関(WHO)が疾病認定しています。依存症は病気で治療の対象です。個人の意志の問題ではなく、病気でやめられなくなっているのです」
―「明日の会」設立のいきさつは。
「アルコールでは自助グループとして断酒会がありますが、依存症はそれ以外にもあり、気軽に通える場が必要と考えました。大学で体験談を語ってもらっている断酒会の会長からも、会を離れた人がもう一度仕切り直せる場所がほしいと聞き、立ち上げに至りました」
―活動の特徴は。
「無料のサロン形式で当事者が集まり、語り合います。抱える問題、やめようとしたきっかけ、大切にしていることなどのテーマを設定して体験を話してもらいます。ただ、フリーのトークもオーケーです。他者の発言、提案を聞くことで悪い習慣を変える気づきになります」
「専門職など支援者は、当事者に何に困っているか聞き、社会復帰や経済的な支援をしていきます。病院や運動プログラムにもつなげられます。旭川市立大の学生もボランティアとして参加しています」
―どのように回復を図っていますか。
「例えばギャンブル依存では、(お金を使えないように)クレジットカードを取り上げると当事者の反発を招くことがあります。興奮を求め、自尊心を埋めるためにギャンブルをしているからです。自尊心を埋める方法が他にないか探るなど、外堀から解決を目指すと抵抗は減ります。断酒の失敗なども回復のステップとすると、当事者が正直に話せるようになります。害を少しずつ減らす『ハーム・リダクション』という考え方です」
―今後、手掛けたいことは。
「会に来ているのは、依存症に悩む人のごく一部でしょう。交流サイト(SNS)や音声だけのオンライン方式も含め、より気軽に参加できる仕組みを考えたい。また処方薬など女性が多い依存もあり、女性向けのものもできればと思います」 (聞き手・桜井則彦)
*取材後記
「依存症は病気」。この言葉が強く耳に残る。「意志の弱さ」との先入観を持っていた。専門的な支援、治療が必要なことをより多くの人に理解してもらいたいと感じた。依存対象には飲酒やギャンブルのほか、SNS、買い物なども存在する。誰もがなり得るのではないか。私も含め身近な問題として考えなければいけないと思う。
ごしょ・たくこ 1978年、旭川市出身。精神保健福祉士。旭川医科大学病院医事課に勤めた後、精神科病院で医療ソーシャルワーカーとしてアルコール依存症の治療に携わった。旭川大大学院修了(地域政策学)。2016年から同大助手、22年から現職。
(2025年01月13日掲載)
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