北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


オランウータンの成長*父の死後 大人の顔へ変化

 4月からオランウータンの担当になりました。日々、オランウータンたちの能力や魅力を感じながら飼育をしています。

 今年2月に雄のジャックが心臓の病気で42歳で死亡しました。ジャックは体が大きく、顔の両側には立派な「フランジ」があり、貫禄のあるお父さんでした。

 このフランジは、雄にだけある顔の横のでっぱりなのですが、成長すればどの雄も発達するわけではなく、いろいろな経験をするなど、自分に自信がつくことで発達すると言われています。

 現在旭山動物園には、ジャックの子どもである、お兄さんのモリト(16歳)と妹のモカ(9歳)がいます。ジャックの死後、モリトに変化がありました。フランジが少しだけ出てきて、顎の下にある「のど袋」も大きくなったように感じます。

 野生下でもフランジのある立派な雄が1匹いると、周りの雄はフランジが発達しないという観察結果があります。モリトは年齢的にはフランジがあってもおかしくなかったのですが、ジャックという偉大な父の存在が、その成長を抑えていたのかもしれません。これからモリトとモカは大人に向かってぐんぐん成長していくと思います。

 オランウータンはとても魅力的な動物です。その一つに物事をじっと考えるところがあります。彼らは群れを作らず1匹で暮らしますので、他のサルの仲間に比べて物静かで落ち着いています。お客さまから見るとボーッとしているように見えると思うのですが、彼らの目を見てみると、真剣なまなざしでじっと何かを見て考えているのです。

 そんな彼らのために私は毎日、餌をいろんな所に隠したり、道具を使わないと餌を取れない仕掛けを設置したり、いろいろなサプライズを用意しています。動物園は自然界に比べて刺激が少ないので彼らがあっと驚いて、そして楽しんでもらえるような工夫をたくさんしていきたいです。(おらんうーたん館担当、獣医師 佐藤伸高)

【写真説明】木の枝葉を食べるモリト
(2024年07月08掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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