北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


天売島おらが島活性化会議代表理事 斉藤暢さん(51)

法人化10年 故郷の魅力づくり続ける*若者に着目 観光資源磨く

 【天売】羽幌町の沖合に浮かぶ離島、天売島。人口減と過疎化が進む島を元気づけようと活動する「天売島おらが島活性化会議」が法人化から10年を迎えた。当初から代表理事を務める斉藤暢(みつる)さん(51)に、活動に込める思いや島の将来像を聞いた。
 
―活性化会議を始めたきっかけは。
 「留萌の高校を卒業して島に戻り、家業の運送業を手伝い始めました。島の衰退を目の当たりにして、何とかしなくちゃという思いが原点です。会議は2011年に発足し、活動を加速させるため、14年に一般社団法人化しました」

―活動のヒントはどこにあったのですか。
 「離島を再生させたことで知られる島根県隠岐諸島の海士(あま)町を天売の仲間たちと視察し、役場や住民のまちおこしへの覚悟とパワーに強い衝撃を受けました。自分たちが今、行動を起こさなければ将来必ず後悔する。活性化に向けてチャレンジしようと決意しました」

―これまでどんな活動をしてきましたか。
 「島の魅力づくりのため、特産の天然アワビを使ったレトルトカレーを開発したほか、島になかったキャンプ場も自分たちの手で造成しました。漂流物がたまり、景観を損ねていた『ゴメ岬』をきれいにする清掃プロジェクトは、クラウドファンディングで資金と人を募ったところ、2日間で延べ100人のボランティアが集まり、約6トンのゴミを除去しました」

―10年間を振り返って手応えはどうですか。
 「日本全体が人口減少に直面する中で、島の人口が減っていくのはある程度は仕方ないと感じています。以前は活性化のために、あれもこれも、と何でもやってみましたが、近年は島の観光資源を磨き、いかに外から人を呼び込むかに軸足を置くようになりました」

―最近はどんなことに力を入れていますか。
 「シーカヤックなど海の体験と、若者や女性にも人気のサウナを組み合わせた観光を提供できないかと検討中です。昨年、ゴメ岬近くに拠点となるシーカヤックの艇庫を建てました。現在は、艇庫に増設する形で、本格的なサウナ小屋を造っており、9月に完成予定です。かつて渇水対策のために植林し、間伐期を迎えた木材を資材として有効活用しています」

―今後の展望は。
 「天売高校の存続が一つの鍵だと考えます。定時制のため、現在は生徒15人が働きながら学んでおり、教員も含めて島にとっては貴重な人材です。島外からより多くの生徒に来てもらうためにも、世界的に貴重な野鳥の楽園であることなど、この島の魅力をもっと発信していきたいです」(聞き手・森麻子)
 
*取材後記
 夕日の美しさに、多彩な野鳥たち…。生まれ故郷でもある天売島の魅力を話し出すと止まらない。清掃を手がけたゴメ岬や海鳥観察スポットの赤岩展望台を案内してもらって、島の自然や歴史、海鳥への深い思いに圧倒された。島に暮らし、見つめ続ける視線の先にある「天売島の将来像」を取材し続けたい。
 
 さいとう・みつる 1973年天売島生まれ。留萌工業高卒業後、祖父が「馬1頭で興した」という天売小型運輸を継ぎ、2020年から3代目社長。名古屋市出身の妻とは、妻が学生時代に島にアルバイトに来ていた時に出会った。
(2024年06月17日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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