北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


シマフクロウの人工ふ化成功*種の保存へ繁殖技術探る


 国内では北海道だけに生息するシマフクロウ。旭山動物園ではこの春初めて、人工ふ化に成功した。ひなはすくすくと育っており、運が良ければ、父親が魚などの餌を口移しで食べさせている姿を見ることができる。

 両親は、雄のロロ(27歳)と雌のモコ(13歳)。2月末に産まれた卵を飼育員が巣箱から取り出し、ふ卵器で温めた。4月8日にふ化したひなを5日後に巣箱へ戻すと、親鳥が子育てを始めた。

 同園でのシマフクロウの繁殖は3回目で、いずれもロロとモコのペア。これまでの2回は親鳥が卵を温めてふ化させたが、今回は、知見や技術を積み重ねる目的で人工ふ化を選んだ。

 人工ふ化させたひなでも、育児放棄せずに親鳥が育てることを確認できたことは、今回の収穫の一つだという。巣箱から卵を安全に取り出すために、親鳥の出入り口とは別に、専用の穴を開けておくといい、などのコツも分かった。

 シマフクロウは国の天然記念物で、絶滅危惧種。巣を作るための大きな樹木や、餌場となる河川が環境破壊などで失われ、国内の生息数は1970年代に約70羽まで減った。しかし、巣箱を設置したり、森林や河川の整備を進めたりといった環境省などの保護活動が実を結び、2022年には200羽以上が確認されている。

 動物園が飼育下での繁殖技術を確立することも、希少な野生動物を保存するために大切なことだ。

 ふ化から2カ月余り。ひなは親鳥と変わらないほどの大きさまで順調に育っている。飼育担当の大内章広さん(39)は「もう少しで餌も自分で食べられるようになる。親離れは秋ごろの予定」と話す。(葉柴陵晴)

【写真説明】旭山動物園で初めてとなる人工ふ化で誕生したシマフクロウのひな。順調に育っている
(2024年06月17日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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