旭山動物園わくわく日記
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チンパンジー誕生*「ソヨ」の分まで成長して
旭山動物園のチンパンジー「フルト」(雌、43歳)が8月14日、出産した。名前は「笑蓮(エレン)」(雌)。エレンは母親のおなかをぎゅっとつかみ、最近では、エレンがフルトの手を借りながら、つかまり立ちを始めた。飼育員の高井正彦さん(51)は「母子ともに健康で、エレンも順調に育っています」と話す。
同園のチンパンジーは昨年、悲しい事故があった。フルトが出産した雌の赤ちゃん「ソヨ」が生後3カ月で事故で死んだのだ。フルトはそれまで4頭を育てるなど子育ての経験も豊富だったが、微妙な関係性の上に成り立つ群れの中で、フルトがソヨを仲間に渡すうち、事故で子どもを失った。
チンパンジーは群れの構成が重要。雄のチンパンジーが青年期となって自分の力を誇示する「ディスプレー行動」が頻繁になり、群れの編成を考え直さなければならない時期が来ていた。このような事故を二度と起こさないため今年7月から、二つあった群れをさらに雌雄を分けて飼育するように。同時期に高井さんがフルトのおなかの膨らみに気づいて、病気の可能性も含めてエックス線検査を行ったところ、妊娠が分かった。
チンパンジーの雌は8歳になると成熟し、1カ月に1回、10~14日ほど発情する。出産した雌は子ばなれする3~5年後をめどに発情が戻る。高井さんは「フルトはソヨを亡くしたため、通常より早く発情が戻ったのです」と説明する。
現在、フルトとエレン親子は、2頭を育てた経験のあるイブ(雌、32歳)と同居し、バックヤードで過ごしている。「イブの手を借りながら子育てを」と考えての同居だが、フルトがエレンを手渡すのは1日でたった15分ほど。フルトは常に抱きかかえて離さない。このまま順調に成長すれば、エレンは11月下旬ごろから屋内放飼場で展示が始まり、来園者が見られるようになる。
「笑蓮」の名前は、高井さんが付けた。エレンが産まれた日のお盆の花として知られる「蓮(ハス)」のように清らかに、そしてソヨの分まで「笑顔」で成長してほしいという思いが込められている。高井さんは「来園者にかわいらしい笑顔を届けてほしい」と願っている。(渡辺愛梨)
【写真説明】フルトに抱きかかえられるエレン(旭山動物園提供)
(2023年10月16日掲載)
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