北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


チンパンジーの子育て*群れと母子 難しい関係性


 チンパンジーが築く上下関係や信頼関係は、人間よりも厳しいかもしれない。旭山動物園は現在、個体ごとの関係を見極めて6頭の群れと5頭の群れの二つに飼育場を分けている。

 子どもが親離れするまで5年ほど。それ以降も親子は固い絆で結ばれている。母が成長した子を抱いて寝たり、子が母の背中をさすってあげたりする。子育てがうまくいかない時もあるが、「母と子だけ群れから分けても、群れに戻れない可能性もある。どこまで人が介入していいのか」と、ベテラン飼育員の高井正彦さん(51)は悩む。

 今年9月27日、チンパンジーの生後3カ月の雌の赤ちゃんが死んだ。身長約50センチ。死因は圧死とみられている。愛称は「ソヨ」。「そよ風のような、爽やかなイメージで命名した」という。35歳以上で高齢出産とされるチンパンジーで、母フルト(42歳)はこれまで4頭を育てたベテランママ。しかし、これまでの育児と違う動きを見せ、はいずることもできない生後2カ月のソヨを仲間に渡すようになった。仲間たちは背中に赤ちゃんを乗せてみたり、あやしてみたりと一生懸命だったそう。フルトの手を離れる時間は日に日に長くなった。「6頭の関係性があり、信頼できる相手に渡すという風になっていたのだろう」と高井さんは振り返る。

 2018年にも、群れの雄が乱暴し、生後3カ月の赤ちゃんが死ぬ事故があった。この教訓を生かそうと、展示時間を短くし、親子の時間を長くする計画を立てた。いつもは群れで一つの寝室に入るが、「夕方から親子だけ別の寝室に入れよう」と決めた日の朝、ソヨは動かなくなっていた。フルトはソヨの遺体を2日間手放さなかった。

 旭山動物園では高齢や近親交配の個体が多いため、大半の雄も雌も避妊手術を施されている。赤ちゃんの誕生は、新しい雌を受け入れ、群れになじむまで待つしかなさそうだ。高井さんは「親子の絆を見て他の個体も育っていくもの。また群れの構成を考えていかないと」と先を見据える。(鳥潟かれん)
 

【写真説明】群れで暮らすチンパンジー(旭川市旭山動物園提供)
(2022年12月5日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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