北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


玩具ブランド「tek」を展開 たんのゆりさん(40)

*製作のアイデア どう生まれる*子育てと自然からひらめき

 

 子供がミニカーを走らせて遊べる風呂敷や、絵を組み合わせて物語を作るカレンダー。デザイナーたんのゆりさん(40)は、旭川市の東旭川町東桜岡で5歳と8歳の男児を育て、玩具ブランド「tek(テク)」を手がける。「親子で夢中になれる遊び」がコンセプトだ。「アイデアは子育てと東桜岡の自然から生まれる」と話すたんのさんに、ものづくりの裏側を聞いた。(聞き手・旭川報道部 若林彩、写真・宮永春希)

――tekの意味は。

「アイヌ語で手を表す言葉です。作る人の手から使う人の手へ、小さな手で遊べるものを作りたいという思いを込めました。手拭いやカレンダーなど身近なものをモチーフに“あそぶ生活道具”を作っています」

――ものづくりのきっかけを教えてください。

「美術の先生を目指して進学した道教大旭川校と大学院で、おもちゃと世界の遊びを研究しました。日本は当時、『たまごっち』などの携帯ゲーム機が人気で、おもちゃは子供が成長すると捨てられるものでした。年を取っても楽しめるものを作りたいと思い、市内の家具メーカーに勤めた後、2010年に1人でtekを立ち上げました」

――製作の過程は。

「工場を持たないメーカーをうたい、当初はアパートの一室で企画した製品をインターネットで販売していました。製作は旭川などの木工工房や染め工場、職人にお願いしています。今は結婚後に移り住んだ東桜岡の自宅が仕事場。窓の外の棚田や、ウサギとキツネの足跡を見ながら考え込んでいます」

――子供が生まれてから、製作に良い影響はありましたか。

「子供たちは家の近くの森で虫を捕って駆け回ったり、オニヤンマのヤゴを育てたりと楽しそう。私も一緒に遊びながらアイデアが浮かぶことが多い。ミニカーで遊べる風呂敷は、息子が病院の待ち時間に床で広げて遊べたらと思い、作りました。子育てに追われて焦った時期もありましたが、子供と向き合ったからこそ作れるものがあります」

――紙工作や折り紙など昔ながらの玩具も多い。

「子供が作るには面倒だけれど、ハサミの使い方が上手になるし考える余白が生まれる。不便なくらいがちょうどいいとアナログの遊びにこだわっています」

――東桜岡215の11にある展示室には、多くの親子連れがやって来ますね。

「実際に見て触れる場として、20年夏にオープンしました。21年春には市7の8のハルニレカフェ2階に小さな展示室も設けました。私も昔はママ友が少なく、家に引きこもりがちでした。親子がほっとできる場所にしていきたいです」

 

*取材後記

tekの出発点は、大学4年時の卒業制作で発表した架空のおもちゃ会社「tek」。広告ポスターには「全身であそびを味わうことが人として成長し生きていくために必要な体験です」と書かれている。展示室を訪れる家族はなぜだか大人の方も楽しそう。私もたんのさんのひょうきんなイラストに心を奪われた一人だ。新型コロナウイルス禍の窮屈な生活で、癒やしを求めているのかもしれない。

1981年、旭川生まれ。木工職人の夫、丹野雅景さんと2013年に丹野製作所を設立し、製品のデザインを手がける。東桜岡215の11と、市7の8の展示室には丹野製作所の作品も並ぶ。営業日はtekのホームページや(電)0166・36・2528で確認を。

 

(2022年1月24日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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