旭山動物園わくわく日記
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キングペンギンのひな誕生*親代わり 飼育員が餌やり
「ひななのに大人のペンギンくらい大きいんだ」―。冬季営業が始まったばかりの園内で、「ぺんぎん館」にいるキングペンギンのひな2羽が、来園者の注目を集めている。ひなは茶色くふわふわとした羽毛で覆われる。成鳥は白いおなかに黒い顔、首元の鮮やかなオレンジなどが特徴で姿が大きく異なる。
両親で子育てをするキングペンギンは、4~6月に産卵期を迎える。ペンギンが足の上に卵をのせているのを見つけると、飼育員が偽物の卵と交換。本物の卵はふ卵器に入れて、ふ化させる。今年は6月に2羽、8月に1羽が誕生した。しっかりと立てるようになったら、偽卵と交換する計画だった。
8月に生まれた1羽はうまく交換できたが、6月に生まれた2羽は親が途中で抱卵しなくなるなどしたため、親に返すことを断念。2羽については、人の手で育てる「人工育雛(いくすう)」を7年ぶりに行うことになった。親が行うはずだった餌を与える世話などを人が担う。飼育担当者の田中千春さん(48)は、過去の「人工育雛」の事例を調べ、2羽を個室で一緒に育てつつ、8月下旬からの緊急事態宣言による臨時休園を利用し、おとなしいペンギンだけの集団に入れるなどして徐々になじませた。
ところが、アクシデントが発生。2羽のうち、体調を崩しがちだったひな1羽が死んだ。田中さんは「残念だった。2羽は仲間だったのに」と肩を落とした。不幸中の幸いで、残りの1羽はそのまま集団になじませることに成功。今では他のペンギンと一緒に飼育されている。
田中さんは「子育ては、親だけでなく全てのペンギンにとって生きがいになる。適度な刺激になっている」と話す。ひなの声がすると当初、他のペンギンもざわついていた。餌の時間になると、ひな2羽のうち、親に育てられている1羽は、親がひなに口移しして食べさせる。もう1羽は、飼育員がくちばしを持ちながら魚を与える。
春になると、ひなの羽毛は成鳥と徐々に同じものになる。ひなはうまく泳げないので、プールに落ちても無事に上がれるよう注意しているという田中さん。「無事に巣立ってほしい」と願っている。(望月悠希)
【写真説明】来園者の注目を集めるキングペンギンのひな(宮永春希撮影)
(2021年11月21日掲載)
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