北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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スポーツ


40*五輪開催 ゴールではない

 東京五輪の聖火リレーが3月25日にスタートした。旭川と富良野、稚内では6月14日に行われる予定だ。ギリシャのオリンピア遺跡で採火された聖火が日本に着いたのは昨年3月20日で、同24日に五輪の1年延期が決まった。残念な思いと、やっぱりか、という複雑な気持ちだった。
 東京五輪・パラリンピックを目指す選手たちにとって、この1年はどんな時間だったのだろうか。気持ちを切り替えてトレーニングに励む選手のほか、けがの回復やレベルアップに充てる期間と捉える選手もいる。逆に、集中力が切れてしまったり、競技継続を断念したりする選手もいる。若手の成長などで勢力図が変わり、改めて代表選考する競技もある。
 友人のパラアスリートが先日、会員制交流サイト(SNS)で「東京パラリンピックを断念する」と公表した。競技を転向し、大会を目指していた彼とは延期が決まった後に話をしたが、「精神的にしんどい」と不安を口にしていた。トップアスリートとして悩んだ末に出した結論。それがどんな内容であろうと、この苦境の中、目標に向かって努力してきた彼の決断には敬意を表したい。
 東京開催が決まったのは2013年9月。それから8年で、当時は想像さえしていなかったような世界に変わってしまった。復興五輪。多様性を認め合う共生社会の実現。さまざまなスローガンがある。大会を開くことがゴールではない。その先に何が残るのか。聖火リレーが始まった今だからこそ、開催の意義を改めて考えたい。

(2021年3月29日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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