北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


カラスなぜ飼育*賢さ知り、共生考える場に

 動物園としては全国的にも珍しいカラスの飼育が、旭山動物園で行われているのをご存じだろうか。真っ黒な姿で街中のごみをあさる“厄介者”の印象が強い一方、頭が良く、動物の死骸を食べることで自然界の生態系を支える。「一方的に嫌わず、カラスのことを理解しませんか」。展示には飼育員のそんなメッセージが込められている。
 北海道産動物舎で飼育・展示されているのはハシブトガラスとハシボソガラス1羽ずつ。見た目はよく似ているが、ハシブトガラスは盛り上がった額に太いくちばしが特徴なのに対し、ハシボソガラスの顔は平らで細いくちばしを持つ。街中でよく見かけるのがこの2種類だ。
 驚くのは知能の高さ。動物園では餌をわざとプラスチックの容器に入れてふたを閉め、上からゴムバンドを掛けて置く。カラスの賢さを知り、餌を食べる過程も楽しんでもらうためだが、2羽はくちばしで器用にゴムバンドを外し、食べてしまう。さらに2羽は、放飼場の周りにやってくる野生のカラスたちにも、金網越しに気前よく餌を分け与える。飼育担当の佐藤和加子さんは「お友だちを大切にするのは良いけれど、餌が減るのは困る」と苦笑いする。
 カラスの展示を本格的に始めたのは約20年前。農村のカラスが都市部に移り、人間が出した大量の生ごみを食い荒らして問題視されるようになったのがきっかけ。北海道産動物舎の2羽も有害鳥獣として捕獲され、譲り受けたものだ。坂東元(げん)園長は「カラスが害鳥になったのは、僕たち人間に責任がある。来園者には人とカラスの共生について考えてほしい」と話す。
 カラスは自然界ではスカベンジャー(腐肉食者)と呼ばれ、動物や虫の死骸を食べて片付ける掃除屋としての役割を担う。カラスを頼って生きる野鳥もいる。チゴハヤブサは毎年6月ごろにカラスのひなが巣立つと、その巣で子育てを始める。東門に近い「ゆっくりロード」にはハシブトガラスとチゴハヤブサが隣同士で展示されている。佐藤さんは「カラスがいなくなったら困る動物がいることも知ってほしい」と話す。(若林彩)
 
【写真説明】北海道産動物舎で飼育されているハシブトガラス(手前)とハシボソガラス(打田達也撮影)

(2020年11月2日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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