北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

大橋美智子(旭川・農業)*猫との暮らし  2019/09/29

 夜になると猫たちの集会があるらしい。出かけるときは、一声鳴けばドアが開く。

 集会は夜明け前に終わる。帰ってくると、まず門番の犬の前に立つ。すると犬がお知らせの声を上げる。それで人が目を覚まし、ドアを開けに起きる、という序列ができている。

 私と夫は一番の下っ端だが、息子だけは猫よりも偉い。猫はご主人様である息子を熱いまなざしで見つめて後を追い、お風呂のときもトイレのときも、そのドアの前でじっと待つけなげさだ。これが人間の女性ならどんなにか…。

 ある日、猫が急にご飯を食べなくなった。昔なら放っておいたものだが、一度くらいは病院へ連れて行こうと思った。動物病院の先生は、いとも簡単に血管を探し当てる。点滴で食欲が復活した。それが数日でまた弱る。また点滴に行く。何度か繰り返し「今日も病院へ連れて行く」と夫にしゃべった朝、姿を消した。家中探して思いがけない場所に隠れていたのを見つけた時、やはり猫は人の言葉がわかるのだと確信した。

 動物病院で先生に診てもらうと、ペットの病気も飼い主の気持ちも軽くなる。

 しかしついに力尽きるときが訪れた。部屋の壁と、家族それぞれの心に爪痕を残し、猫は旅立った。猫の名はチョロちゃん。今までありがとう。


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