北海道新聞旭川支社
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北極星

石川千賀男(旭川・公益財団法人理事長)*終戦の日に想う  2019/08/26

 三浦綾子は長編小説「銃口」で、一貫して「平和」の尊さを主張しています。主人公の北森竜太が歩んだ人生の軌跡を通して、戦争の記憶を風化させず、現代に呼び戻そうとします。

 一人の人間としてキリスト信者として、そして作家として、深い責任感に促され、人の恩と人の愛、人としての真心をこの作品で世界の人々に問いかけ、明らかにしようとしたのです。

 三浦綾子記念文学館初代館長の高野斗志美さんはこの作品について、平和の尊さを問う三浦文学の「優れた記念碑」だと、あとがきに書き残しています。

 先日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)のある会合に出席しました。ユネスコは、第2次世界大戦終結の翌1946年の創設で、教育や科学、文化の振興を通じて世界平和に貢献することを目的としています。

 ユネスコ憲章の前文には「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦(とりで)を築かなければならない」と書かれています。私は国際ロータリークラブに入会していますが、その目的も究極的には「世界平和」なのです。

 近年、国益や領土を巡る争いが目立ちますが、各国首脳は世界平和という大きな視野に立ち、万国民の強い絆と思いを理解して解決策を協議してほしいものです。平和を願わない人は世界に一人もいないのです。


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