北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

村山修(枝幸・ダイニングバー店主)*「ジョッピン カケタカ」  2019/06/23

 夕暮れ時、太陽が昇る頃、時には夜通し、高いよく通る声で、安眠を妨げてくれる「ジョッピン カケタカ」という鳴き声。ああ、夏が来たのだな、と感じると言いたいところだけれど、布団のなかで「うるさいなぁ」とつぶやくこともある。かなり用心深いようで、人にその姿を見せることはほとんどない。「エゾセンニュウ」という夏鳥だ。

 そして、昼間は、低く通る「ボボッ ボボッ」という鳴き声で、暑さを増幅させてくれる「ツツドリ」も渡ってくると、オホーツクは、本格的な夏となる。

 草地や山がにぎやかなら、前浜ではウニがとれ、コンブ漁が始まり、ホンマスが回遊し、近年目立つブリもやってくる。春の山菜でデトックスした体に甘みたっぷりの魚介はうれしい。海のなかを見ることはできないけれど、口に運ぶとれたての恵みで、夏の訪れを楽しむ心地よさ。

 耳に届く夏鳥の声や口に入るオホーツクの魚など、のんびりしていたら、目に飛び込んできたのは、「ヒグマに要注意」の看板。家のすぐ近くに立ってしまった。店や街へ行くにはその道しか、通る場所がない。日中は周りを見ながら歩く。が、「ジョッピン カケタカ」と言われる時間帯に、フラフラと歩いて帰ることができなくなってしまった。


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