北海道新聞旭川支社
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北極星

村山修(枝幸・ダイニングバー店主)*思いを寄せて 2019/03/25

 オホーツクに春を告げる「毛ガニ漁」がはじまった。ホタテ漁場造成や越冬タラバ漁もはじまり、雪と流氷に覆われた冬が終わり、春。とはいえ、くすんだ色の残雪、まだ芽吹かない木々、待機する除雪車など、三寒四温の時期なのだと、まだ3月なのだと。

 8年前。越冬タラバを網からはずす作業を家族はしていた。僕は、店の開店準備。つけっぱなしのテレビの一報は、何が起きているのかすぐには分からなかった。青森出身の母に、大きな地震があったみたいだと、作業場に伝えた。その日、時間がたつにつれ状況が目の当たりになり、言葉を失う時を過ごした。

 8年がたった。原発事故を「アンダーコントロール」と言い、マリオになって「東京で会いましょう」と復興をアピールしたオリンピックは来年に迫る。純粋にリアルなドラマは楽しみだが。

 海明けしたオホーツクの恵を受け取れる日常はあの日から変わらない。そして、昨年経験したブラックアウト(全域停電)の非日常から半年が過ぎて、何が変わったのだろうか。大震災から避難している5万2千人もの方々の今は、どうなのだろうか。

 季節はいつものように巡る。記憶は時間の経過とともに薄れていくものだろうけれど、思いを寄せることは、これからもずっと変わることはないと思いたい。


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