北海道新聞旭川支社
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北極星

谷紀美子(名寄・非常勤図書館員)*エスカレーター事件 2018/11/26

 10月のある日、応募したことすら忘れていた懸賞に当選してギフト券3千円分が届いた。早速次の日、若干ウキウキして市内の某店に出かけた。

 エスカレーターで2階へ上がろうとすると、両手で杖(つえ)をつく危なっかしい感じのおばあさんが先にいて、私も続いたその時、おばあさんがグラッとよろめいて倒れかかってきたのだ。慌てて支えようとしたのだが、意外に重たくて「無理だ!」と思った瞬間、おばあさんもろとも転んだ。

 動くエスカレーター上でなんとか起き上がり、おばあさんも起こし、よろよろと2階に上がった。おばあさんは案外平気なようで、杖をつきつつも、すたすたと歩いていってしまった。

 私は、というと脇腹と左のすねを打撲し、右足からも流血しているし、買い物どころではなく、そのまま1階に降りた。現場を見ていた店員さんが駆け寄って「大丈夫ですか、災難でしたね」と声をかけてくれたので、「ほんと、災難でした」と力なく笑って帰った。脇腹とすねにエスカレーターのギザギザ通りの筋状の擦り傷ができていて、絆創膏(ばんそうこう)を10枚ほど貼った。

 われながら痛々しい。それでも運転用の手袋をしたままだったのと、どうでもいいレベルのジーパンをはいていたのが不幸中の幸いだった。私は自分の非力が身にしみ、もう絶対エスカレーターで高齢者に近づくまいと心に誓った。


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