北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

嶋崎暁啓(豊富・NPO職員)*秋色に染まる地平線 2018/10/14

 今年は山の紅葉が奇麗だ。宗谷地域の森では、トドマツやエゾマツの緑、ミズナラやダケカンバの黄、ツタウルシやヤマブドウの赤、というように木々が山なみを美しいグラデーションで彩る。ただ、全体的に葉が赤くなる木が少ないため「紅葉」というよりは、少し地味な「黄葉」になる。大雪山系のような鮮やかな紅葉と比べると、物足りないような気もするが、慣れるとこの控えめな様子が宗谷らしく、好ましく感じられる。

 湿原も秋の深まりとともに色づいてきている。実は、秋の湿原は植物が赤や黄に紅葉する「草紅葉(くさもみじ)」と呼ばれる光景が楽しめるのだ。これからの季節、湿原の色は日々変わっていく。最初は濃いオレンジ色になり、やがて利尻山が冠雪するころになると植物の色が抜けて金色に変わる。花や小鳥でにぎわう夏の青々とした湿原も素晴らしいが、秋の静かな湿原もまた格別の趣がある。

 観光客が落ち着いた木道を歩くと、陽の光を浴びて湿原全体が黄金色にキラキラと輝く。それが見渡す限り広がり、地平線まで続いているのだ。見上げれば澄み切った秋の空を、オオヒシクイなどの渡り鳥が南を目指して飛んでいく。言葉では言い表せない心地よさが全身を包み込む。まさに絶景。この感覚、ぜひ味わっていただきたい。


戻る