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北極星

藤沢隆史(礼文町教委主任学芸員)*ご先祖様との対面 2018/09/16

 礼文島を代表する縄文時代遺跡である船泊遺跡。5年前には出土品が重要文化財に指定されるなど、考古学の分野では学術的価値の高い遺跡である。

 1998年の発掘調査から20年がたった今年の夏、人類学の分野においてこの遺跡が大きな脚光を浴びた。それが縄文人の顔の復元である。国立科学博物館の研究グループが、発掘された人骨からDNAを採取し、その遺伝子を分析して日本で初めて縄文人の頭部全体を復元したのである。

 復元された人物は、性別が女性で年齢は40代、血液型がA型で瞳は茶色、髪が縮毛で肌にはシミが多く、耳あかが湿っている人。

 この人が父方と母方から受け継いだ遺伝子情報がとても似ていることから、両親が近い血縁関係にあったこともわかった。これは、両親の婚姻範囲が狭かったということであり、ヒスイやタカラガイなど本州産の出土品から想定されているこの遺跡の人々の広範囲な交易活動と、いわゆる婚活とは関係なかったようだ。

 出土品から当時の生活を知ることには限界があるが、モノの向こうにヒトの姿が見えると、太古の暮らしが身近に感じられる。

 ちなみに、この顔を見た第一印象は「どこかで見たことある顔」。ただ、ご先祖様もおそらくこう思っただろう。「あなたの顔も見たことあるわ」と。


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