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北極星

 大槻みどり(富良野・カフェ経営)*自慢の相棒 2018/06/03

 4月のポカポカ陽気に誘われ、冬眠していたスーパーカブを車庫から引っぱり出す。「春だよ、起きて!」と話しかけながらキック、キック、キック。寝起きが悪いのは私と一緒だ。

 1973年製のC50。「そんな昔のカブとは思えないほどツヤツヤでキレイですね!」と、ほめられるたびに、1歳違いの自分の顔のツヤのなさに落胆する。

 ブルルンと目覚めたカブに「おはよう!」と声をかけ、さっそく近場を走る。風が気持ちいい。ニヤニヤが止まらない。「春だー!」と叫びたくなる。この感覚、雪国のライダーさんなら分かってくれるだろう。

 なんせ壊れないのでバイク屋に行ったことがない。とにかく頑丈。そしてすこぶる燃費がいい。遅いけれど上れない坂はない。コツコツと働き者。「カブのように生きていきたい」と常々思う。こちらは身体のあちこちがガタついてきて、さらに食べてばかりで、せっかちで、ぐうたらとくれば、カブには見習うべきことばかりなのである。

 6月、富良野はこれからがツーリングシーズン。私のカフェにも、全国からいろいろなバイクがやってくる。

 どのライダーさんにとっても、自分のバイクは分身であり、ライバルであり、誇りに思える相棒である。そして誰もが内心「うちの子が一番」と思っているのだ、私のように。

 おおつき・みどり 江別市生まれ。札幌で自動車情報誌や旅行雑誌の会社勤務を経て2005年、富良野市に移住。夫の恭敬さんが営む陶芸工房「野良窯」に併設した古民家カフェ「カフェノラ」を経営。46歳。


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