北海道新聞旭川支社
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北極星

 谷紀美子(名寄・非常勤図書館員)*トンネルの先の思わぬ未来 2018/03/29

 30年前の3月、青函トンネルが開通した。青森発の1番列車「海峡1号」の運転士が中学の同級生・オオバ君だったから、とても記憶に残っている。

 開通記念の「青函博」というイベントもその夏に函館で開催されていて、実家へ帰省したついでに家族で見に行った。企業展示ではモデル住宅などもあって、肌寒い天候だったから屋内でひと休みしたくて入ってみた。無落雪屋根とか省エネ暖房システムとか、外観は全くおしゃれじゃないけど居住性が良さそうな感じが気に入って、ついついアンケートにも記入した。

 ほどなくその住宅会社から連絡が来て、なんだかすっかりその気になって翌年、家を建てる運びになった。青函トンネル開通と冷夏はわが家に意外な波及効果をもたらしたわけだ。

 昨年、還暦記念の同窓会に出席したら、あのかっこよかったオオバ君は頭頂部の寂しいおじさんになっていた。わが家も無事にローンは完済したが、あちこち傷んできた。青函トンネルも随分、補修工事が必要だと聞いた。30年たつといろいろと老朽化するものだ。

 この春、私たちの学年は定年を迎えるのだけど、再任用で働く人も多いだろう。あの頃、まさか60歳で年金が出ない未来が待っているとは思わなかったし、青函トンネルを新幹線が通る夢が実現したのに、札幌駅の新幹線ホーム位置でこんなに迷走するとは。


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