北海道新聞旭川支社
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北極星

 伊藤由紀子(留萌・主婦)*72年前のチビチリガマ 2017/11/07

 沖縄の聖地の一つで、1945年、米軍が迫り来る中で多くの住民が集団自決した読谷村の洞窟「チビチリガマ」が、年若い男の子たちに荒らされたと新聞に載った。

 20年前、沖縄県在住の平和運動家、知花昌一さんの案内でチビチリガマにお参りすることができた。洞の奥の方にブロックが立っていて、奥には行けないようにしてあった。訳を尋ねると「この奥にはまだ収集されていない大勢の人の遺骨があって、観光客が入り込むと靴で遺骨が砕けるので、ここを守っているグループの人たちが入り口をふさいでいたのです」と言う。

 当時、サイパンからの帰還兵2人が自決を主張し、布団や衣類を積み上げて火をつけたが、4人の母親たちが「生きるために避難して来たのに」と火をたたいて消した。この母親たちは乳飲み子を連れていた。でも結局、母親が子を殺し、元従軍看護婦が注射をして回り80人以上が死亡した。

 チビチリガマに逃げ込んだ老人や女性、子どもたちは米軍に攻撃されたのではなかった。当日の朝、米兵が紙に「出ておいで」と書いて尋ねて来たのに、断ってしまったのだ。

 72年前に終わった太平洋戦争。日本軍が近隣の国や米国を攻撃した戦いだったことを、私たちは、若者たちに正しく伝えていただろうか。


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