北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

安川としお(士別・朗読パフォーマー)*塗り重なった歳月 2017/02/04

 捜し物をしていたら、タンスの奥からつなぎのキルティングの防寒着が出てきた。1975年頃から、舞台装置作りの時に身に着けていたもので、青地なのだが、舞台装置に塗った塗料が紅葉の山のようにいっぱい付いている。単色もあるが、中には調合するのに苦労した色もあり、ひと目見ただけで「あの作品のあの場面の壁の色、あるいはフスマの色」と記憶が鮮やかによみがえってくる。

 演劇活動をスタートした頃は、舞台装置の彩色は看板屋のT君にお願いしていた。「白い塗料をそのまま塗ったものを舞台に上げると、照明を浴びてまぶしく光ってしまう。少し黒を混ぜたぐらいで“白”に見える。さらに黄色を少し混ぜると色がやわらかくなる」など、彼からはいろいろなことを教わった。

 彼の本業が忙しくなってくると、要所以外はみんなですることが多くなった。彼なら、必要な塗料を簡単に調合してしまうのだが、白さが足りない、赤みが強いといって色を足していくうちに、塗る面積の10倍もの塗料を作ってしまう失敗は度々だった。また、廃校を利用した作業場は寒く、せっかく塗った塗料が、翌日行ってみると凍結して大変なことになっていたりもした。しかし装置はしっかりと作り込み、リアルに彩色するというポリシーは貫き通した。

 つなぎに残る色たちに触れ、彩色の刷毛(はけ)を握る楽しい時間が再び訪れることを夢見る。


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