北海道新聞旭川支社
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北極星

桑原隆太郎(名寄・文化団体事務局長)*地名としての「風連」  2016/12/17

 私が住む名寄市の旧風連町の語源は、アイヌ語で「赤い川」を意味する「フレぺツ」あるいは「フーレベツ」に由来する。そのアイヌ語に漢字の「風連」を当てた経緯が分からず、ずっと気になっていた。

 今年の夏、たまたま道の文書館を訪れたついでに、アイヌ語由来の地名に関する文献に当たってみた。その中で「アイヌ語地名は明治初年に内陸の開拓をすすめるに先立って、各地行政官によって漢字化がすすめられたが、それぞれの担当者の好みによって、相当無理な当て字をしたところがあり…」という記述にぶつかった。

 さらに、つい最近の新聞記事に「北海道では、アイヌ語由来のびっくりさせられる地名に事欠かない。多くは明治期に役人が土地の来歴を無視して、ときには教養をひけらかすような思いつきで日本語を当てたものだ」とあった。

 この二つをもって、私の長年の疑問は一応、解けたと思うことにした。当時の担当役人が事務的にやったことだとしたら味気ないが、ことわがまちに関しては、「風連」の漢字を当てたことには大満足だ。別に風が強い土地柄ではないのに、あえて「風」の1字を選んだうえで、音の響きがいい「連」を重ねたセンスに感心する。「フーレン」の語感は絶妙だ。映画「南極物語」の「フーレンのクマ」がよみがえってくる。

 全国の市町村名に「風」の1文字が入っているのは、現在は沖縄の「南風原町」、青森の「風間浦村」など数少ない。合併で、自治体としての風連町は姿を消したが、地名としての「風連」は健在だ。


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