北海道新聞旭川支社
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北極星

國枝保幸(市立稚内病院長)*宗谷の医療圏  2016/11/26

 宗谷総合振興局の管内は2010年春より幌延町が組み込まれ、10市町村で構成されています。面積にすると、京都府に匹敵する広大な地域に約7万人の住民が暮らしています。これは、あくまで行政区域の話です。

 稚内から日本海沿いに南下すると留萌、内陸を国道40号で行くと名寄、オホーツク海沿いに走れば紋別、そこまで総合病院はありません。いずれの街も距離にすると、約180キロ離れています。つまり、大ざっぱに言えば稚内から半径90キロの範囲と利尻・礼文の離島を含めた地域が、「宗谷の医療圏」ということになります。市立稚内病院はこの地域唯一の総合病院であり、1年365日、年中無休でこの地域の住民の命を守る「砦(とりで)」なのです。

 地域を守る地方病院はどこも医師確保に苦労をしています。

 そのなかで、道立紋別病院は大学医局の内科医師派遣打ち切りに端を発し、固定医が減少、地域の基幹病院の役割を果たせる状況にありません。いわゆる「地方の医療崩壊」の典型例です。現在、新病院を建設し広域紋別病院として再起を図っていますが、やはり医師の確保が一番難しいようです。稚内も同様ですが、どの地方病院も常時、医師確保には頭を悩ませています。

 日本中どこへ行っても平等に医療を受けることができるという、この国の神話は今や崩れつつあるのです。


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