北海道新聞旭川支社
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北極星

谷紀美子(名寄・非常勤図書館員)*実家を片付ける  2016/08/20

 訳あって、お盆前に姉夫婦と私たち夫婦は道南のO町に集合し、実家を片付けた。「訳」に当たる部分はいずれ機会があったら書こうと思う。

 このたびの片付けは、もう家を解体して更地にしてしまうというレベルのもので、もちろん最終的には業者さんにお任せなのだが、そこに至るまでには、やはりこまごまとした作業は多い。

 物の整理や処分はもとより、ガス、水道、電気の使用停止を連絡したり、最後の固定資産税を納めたり、地主さんにあいさつに行ったり、法務局に滅失登記の方法を問い合わせたり、なんだかんだと忙しい。

 実家の片付けは最近よく雑誌などに特集記事が載るくらいだから、多くの人が悩みや困難を抱えているのだろう。実際、「これ、どうする?」みたいな会話をしつつ、作業は進んだり、さっぱり進まなかったりする。地元民ではないのでゴミの分別にも苦労し、結局、最後まで「燃やす粗大ごみ」と「燃やさないゴミ」の違いには釈然としないままであった。

 一番の難題、仏壇はお寺の住職にお経をあげてもらって、後は処分することにした。うちの宗派では魂抜きなる言葉は使わないのだと、この年にして初めて知った。最後に家の前で記念撮影して解散した。

 長い間お世話になったO町に心ばかりのふるさと納税をしたら、2日後には返礼品の立派な毛ガニが届いた。早い。ゴミの分別は複雑だが、ふるさと納税に関してはすっきり明快である。そんなO町に、もう帰る場所がなくなった。


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