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北極星

福嶋匡洋(羽幌・臨床心理士)*「ただいま」の喜び  2016/08/08

 先月のこと。2歳になった息子が、出勤する私に「とうさん、いってらっしゃい」と手を振った。少し前に「バイバイ」が「いってらっしゃい」に変わったばかりだった。あまりにも自然に言ったので、すぐには昨日までとの違いに気付かなかった。さまざまな場面で2語文で話すことが増え、表現の幅が広がった。

 息子は毎朝玄関までついてきて、ドアが閉まるまで見送り続けてくれる。うれしいやら寂しいやらで、度々閉めたドアをもう一度開けてしまう。幼稚園年中の娘も以前は見送ってくれたが、最近は「おとうさん、いってらっしゃ~い」とテレビを見たまま言うことが多い。娘にとってこの時間は登園前の大事なリラックスタイムなのだ。ちょっぴり寂しいが、これも立派な成長の証しだろう。

 「いってらっしゃい」の後には「おかえりなさい」があるが、こちらは聞く機会が少ない。だいたい「おはよう」がその代わりになる。めったにないからなのか、娘も息子も「おかえりなさい」はえらくハイテンションで、何かの祭りが始まったかのような熱烈歓迎ぶりだ。私も両腕に子どもたちを抱えてはしゃぐ。子どもまみれになって、「ただいま」と言えるこの瞬間がたまらない。

 自分が子どもだった頃はちっともわからなかったが、送り出してくれる、迎え入れてくれる家族がいることのありがたみを年々強く感じるようになった。

 今日も「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」の間で頑張ってみようかな。


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