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北極星

福嶋匡洋(羽幌・臨床心理士)*初めての○○  2016/06/03

 育児経験がある人は、子どもの「初めての○○」に出合い、喜んだり驚いたりした経験があると思う。わが家にも今夏5歳になる娘と2歳になる息子がいる。私は妻から聞くことの方が多いが、初めて手をつないで散歩したことや、初めて「おとうさん」と呼ばれたことなど、印象深い「初めての○○」も体験できた。

 そして先日、またひとつ息子の「初めての○○」に出合った。旅行中に大きな公園に立ち寄り、私は息子と広場で遊んでいた。急に息子が走りだし、その先を見ると小さな男の子たちが遊んでいた。「子ども同士で遊びたいのかな」と、少し距離を取って見守ることにしたのだが、息子は男の子たちを素通りして、2歳後半とおぼしき女の子のところに向かった。息子は離れて様子をうかがっていたが、女の子がそれに気付くと近づき隣に立った。何をするのかと見ていると、「ワンワン、いた」と犬を指さしながら女の子を笑顔で見つめたり、「ブーブー(車)、いこう」と誘ったりと、覚えたての二語文で年上のお姉さんをナンパし始めた。しかし女の子は息子に全く見向きもしない。息子の「初めてのナンパ」はごう沈に終わった。

 その後、合流した妻に事のいきさつを話し、一緒に大笑いした。不意に妻が「○○は好きな男の子いるの?」と娘に振ると、「いるよ。××くん」と即答した。私は反射的に「えっ!?」と声を上げて固まった。息子の初ナンパは大いに笑えても、娘の初恋は全く笑えない。今から10年後が恐ろしい。


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