北海道新聞旭川支社
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北極星

高木知敬(市立稚内こまどり病院長)*外反母趾  2016/04/29

 外反母趾(ぼし)に困惑している。両足の親趾が外側に向いてきたので、不自然な箇所に加重がかかって靴ずれができ、皮膚が分厚くなってタコになり、ひりひりと痛む。

 還暦をすぎていつの間にか、こうなった。私の場合、もともと偏平足(へんぺいそく)で、歩き方にくせがあり、若い時、小さめの靴をはいていたせいもある。

 外反母趾はよくある病態なので、シニア層向けの雑誌には対策グッズの広告が載っている。足指の矯正装具、靴の中敷き、多指靴下などだ。しかし私の経験では、それらは気休め程度の効果しかない。

 そのくせ、毎朝ランニングをやったり原野を歩いてイトウ釣りをしたりしているので、けっして治らない。苦痛なら家で静かにしていればいいのだが、長年の生活習慣は変えられない。

 そこで、私は外反母趾対策に5本指靴下をはき、外出時は痛みの軽いスニーカーを履くことにした。スーツを着ても足は黒いスニーカーだ。いまさら外見など気にしていられない。「走るため」と居直ればよい。

 体力に自信があっても、加齢現象は忍び寄り、体のあちこちがほころび、傷んでくる。腹立ち、反抗してもよくならないから、現状を受け入れるしかない。

 今年も春がきて、アウトドアを闊歩(かっぽ)する心地よい季節となった。会議では難聴なのに、原野では野鳥のさえずりが良く聞こえる。活字には老眼なのに、川では魚りんがはっきり見える。街では痛い足も、釣り場ではまったく気にならないのが不思議だ。


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