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北極星

伊藤由紀子(留萌・主婦)*うそ  2016/04/09

 1年間にたった一日だけ「うそ」をついてもいい日があって、エイプリル・フールという。ただし他人に実害を与えないうそに限るとのことだ。

 子どもの頃は家族だけでささやかなうそをつきあって笑うことが多かった。今は亡き母は面白いことが好きで、映画やお祭り花火大会に連れて行ってくれた。困ったことにエイプリル・フールが大好きで、うっかりしているとすぐひっかかった。

 4月1日は朝から気をつけていたが、19歳の時、私がアルバイトに行っている間に遊びに来た大学の友だち2人が、母のうそに引っかかり、母を喜ばせてしまった。母は「今朝大けがをして○○病院に入院したの」と友だちに言ったのだ。友人は慌てて○○病院に走って行った。その様子を思い出してうれしそうに話す母は、もはや翌年の4月1日につくうそを考えているようだった。

 いたずら好きな母だったけれど、内職の仕立物がない時は、寮生活をして親元を離れていた友人2人を「カレーライスの夕食付き」でマージャンに誘った。そのうち2人以外も交ざるようになり、6畳間は卓を囲む4人と待機者でいっぱいになった。未成年者が多かったので「酒はなし」「賭け事なし」「夜10時には解散」をみんなしっかり守ってくれて、たびたび盛り上がったのは本当の話。

 それに引き換え、悲しい4月1日は、敗戦間近の70年前の沖縄本島に米軍が上陸し多くの住民が犠牲になったことだ。きな臭い法案が次々と決められようとしていることが怖い。


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