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北極星

沢田健(富良野市博物館学芸員)*伝えることの難しさ  2016/04/01

 私の勤める博物館では、今年から東京大学北海道演習林の協力を仰ぎ、同演習林のフィールドで市内小中学生の森林体験学習の仕組みや体制づくりを進めることになった。2月には十数団体で構成する協議体を立ち上げ、先日は子どもたちを森へ誘う案内人役を担ってくれそうな方々に声かけをして「ガイドの集い」を開催した。

 この場で、私自身も常々感じていて、話題に上ったのが子どもたちに「伝える」難しさで、実際に「伝わっているのか」よく分からないという話になった。込み入った難しいことを長々と話すのはもちろん論外である。一方、とても愉快なプログラムで参加者が笑顔で帰ったからといって、核心が伝わったのかどうかは定かでない。とはいえ最低限の伝える技術や知識も習得すべきで、その準備やバランスが大切だということになろうか。

 実は最近、ようやく反抗期を迎えたわが子との会話中にこれと似たような問題を感じることがままある。会話がスムーズに運べたときは、私が彼としっかり向き合い、さりげなくペチャクチャと話しかけ、頭から彼の言葉を否定しなかったときではなかったか。わが子でも伝えたいことが伝わったかどうか、曖昧なのだから実に心もとないが、ここにヒントが隠れていそうだ。

 伝わっているかどうか心配するよりも、ひるまず、おごらず、自分自身の言葉で相手に向き合って話すこと。しばらくはこんな点を気にかけて仕事とわが子に向き合っていきたい。


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