北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

村山修(枝幸・ダイニングバー店主)*春を待つ  2016/02/26

 北極点と赤道の中間が北緯45度。この緯度をたどると、ヨーロッパでは北イタリアやフランスのプロヴァンス地方で、アメリカではミシガン湖付近にあたる。北半球の真ん中のオホーツクは、氷に覆われる南限の海だ。

 遠くアムール川が結氷し、冬の寒さと共にサハリン北辺の海も凍る。流氷が成長拡大しながらオホーツクを埋める。

 それが毎年繰り返され、この豊かな海となっている。海面が完全に閉ざされ、見渡す限りに広がるのは、真っ白な雪と氷の世界、というのが当たり前だったのは、もう昔話みたいで、最近では来たり来なかったり。厄介者扱いされた時代とは別の意味で、ヤッカイだ。

 宮城県東松島市の民家の庭に、今年も梅の花が咲いた、という写真ニュースが先日掲載されていた。津波を被災した梅の木だ。

 あの日からもうすぐ5年になろうとしている。あの時も咲いていたという梅。

 変わらない四季や自然の営みとは別に、失われ、そして生まれ変わろうとしている街や人々、その暮らし。僕たちはいまだその最中にいる。

 レーダー解析をみると、沖合には流氷帯がしっかりとある。オホーツクはまだ冬のようだけど、確実に、海明けの春がもうそこまで来ている。越冬タラバ漁や3月中旬解禁の毛がにかご漁で始まる春だ。

 ながくても遠くても、厳しい時があっても、明けない冬は無い。


戻る