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日曜談話室

佐々木響子さん(39)*子育てガイド本「るんるん」を出版*悩んだ経験を糧に ママ目線で*前向き育児 ブログで共有(2020年1月12日掲載)
ささき・きょうこ
渡島管内森町生まれ。小樽商科大学を卒業後、道内の観光業界で働き、2010年に長男の出産を機に退職。現在は旭川市内に夫と次男と3人で暮らす。「るんるん」は1冊500円で、旭川市内のこども冨貴堂(7の8)などで販売している。

 旭川や近郊の子育て情報が詰まったガイド本「るんるん」が、2019年3月の発刊以来、目標の千冊を売り上げた。旭川市内の主婦佐々木響子さん(39)が、5年前からブログで発信している子育て体験談を基に出版した。天真爛漫(らんまん)な笑顔の裏には、育児に悩み、長男を事故で亡くしたつらい経験がある。現在は5歳の次男を育てながら、ブログを書き続ける思いを聞いた。(聞き手・旭川報道部 若林彩、写真・打田達也)

 ――「るんるん」には子どもの遊び場や子育ての相談窓口など、細かな情報が盛り込まれていますね。

 「私と同じく子育てで悩んだ経験のある友人5人に呼び掛け、知っている限りの情報を入れました。産後は文字が頭に入らないからと写真を大きくし、育児体験談も紹介しています。『るんるんを持って出掛けたよ』と声を掛けてくれた人もおり、うれしいですね」

 ――佐々木さんも悩んだ時期があったんですね。

 「30歳で長男を出産し、母親の介護も重なって精神的に追い詰められていました。『一人で育てなければ』と家に引きこもり、どこに行けばいいか、誰に相談すればいいのかも分かりませんでした。夫や周りの人に頼れば良かったのに、頼り方が分からなかった。そんなとき、7カ月の長男を事故で亡くしました」

 ――つらい経験でした。

 「自分を見つめ直すため料理教室やエアロビ、手話サークルとさまざまな活動に参加し、人のつながりができました。これまで『車がない、友達がいない、情報がない』と思い込んでいましたが、行動すれば変えられると気付いたんです」

 ――6年前に2人目の息子さんが生まれましたね。

 「生後2カ月からバスを利用し、旭川や近郊の親子向けイベントに出掛けました。街に出て人と触れ合うことの楽しさを知ってもらいたいと、次男が1歳のときにブログ『旭川のお母さん応援企画室ルンルン』を開設し、目的地までどんなバス路線を使って行ったかや、イベントに参加した感想の発信を始めました」

 ――ほぼ毎日発信し、読者は約400人います。

 「ブログを通して子育て中の親と知り合い、現在も平日の仕事終わりに悩みや情報を共有する『夕方ママ会』を開いています。子育て講座やエアロビも自分で企画して開催するようになり、札幌や東京から講師を呼ぶこともあるんですよ」

 ――現在の佐々木さんを見て、過去に育児で悩んでいた姿が想像できません。

 「昨年からは市の民生委員児童委員や町内会の役員も務めています。自分でもこんなに積極的になれたことに驚いていますが、全てはママ目線の意見を届けるため。今も2人の息子に支えられている気がします」

*取材後記
 「るんるん」の表紙に描かれているトラとウマの絵がずっと気になっていた。佐々木さんに尋ねると、亡くなった長男と、5歳の次男の干支(えと)だと教えてくれた。育児で悩んだこと以上に、息子たちが子育ての楽しさを教えてくれたという。「もう一人で悩まなくていいよ」―。本から伝わるメッセージは、佐々木さんが過去の自分に届けたかった言葉なのではないかと感じた。


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