北海道新聞旭川支社
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日曜談話室

古屋一郎さん(58)*幌加内町そば祭り実行委員長*集客力 高齢化のマチでどう生かす*若い生産者 意欲向上の場に(2019年8月11日)
こや・いちろう
1961年、幌加内町出身。幌加内農業高(現幌加内高)を卒業後、家業の農業を継いだ。2013年から、きたそらち農協幌加内地区理事を2期6年、町そば祭り実行委副委員長を3年務めた。17年から町そば祭り実行委員長を務める。

 【幌加内】ソバの作付面積日本一のまち・幌加内を代表するイベント「幌加内町新そば祭り」が8月31日、9月1日の両日、開かれる。人口約1500人のまちに、昨年は2日間で約5万5千人が訪れた。1994年に始まり、大きな集客力を持つイベントに育った新そば祭りの実行委員長古屋一郎さん(58)に、祭りの狙いと課題を聞いた。(聞き手・士別支局 山村麻衣子、写真も)

 ――新そば祭りは今年で26回目です。

 「幌加内は1980年からずっと、ソバの作付面積日本一。しかし、当初はソバを生産し、そのまま町外に販売していたので、幌加内の知名度は低かった。町内にそば店もありませんでした。そこで、町内のソバ生産者を中心にソバで地域おこしをしようとそば祭りが始まりました」

 ――古屋さんもソバ生産者です。

 「私は5代目の実行委員長ですが、歴代の委員長もみなソバ生産者。主催団体のトップを生産者が担っているのはこの祭りの特徴です。1回目の来場者は約5300人で、4回目以降は1万5千人を下りません。手作りのイベントで、こんなに大きくなるとは思いませんでした」

 ――そば祭りの成果は。

 「知名度を上げられた実感はあります。旭川や札幌で『幌加内といえばソバ』と言ってもらえます。そば祭りの始まりと時を同じくして、町内に手打ちそばの団体ができ始め、現在は町外にも多くの会員がいます。今年のそば祭りには手打ちそばを提供する14店が道内外から出店するほか、焼き鳥などを売る露店も85店ほど出ます。町外の関係者は年々増えています」

 ――課題は。

 「まちの過疎化、高齢化、農家戸数の減少が進む中、そば祭りが今の状態でいつまで続けられるのか分かりません。規模を縮小したらいいという意見もありますが、来場者の期待も大きく難しい。スタッフとなる町民が少なくなる中で、運営方法の議論は必要です。一方で、ソバ生産を担っていく下の世代がそば祭りに関わり、成長していることも感じています。町のためにも彼らを大事に育てていかなければなりません」

 ――ソバ生産者がそば祭りに関わる意味は。

 「町内の生産者はそば祭り用に通常より20日ほど早くソバをまいています。そばは『ひきたて、打ちたて、ゆでたて』がおいしいとされますが、刈りたての新ソバはもっとおいしいですからね。そば祭りは、町外の多くの人が幌加内のそばを『おいしい』と言って食べる姿を見られる機会。ソバ生産者がプライドを持ち、収量をより高め、良質なソバを生産するための意欲向上につながります」

*取材後記
一昨年、昨年と、取材やプライベートで新そば祭りに行き、会場の熱気と新そばのうまさに驚かされた。「当日は忙しく、一度も祭りを満喫したことがない」と古屋さんは笑う。祭りは今年で26回目。その間、町内の人口は千人減り、農家戸数も50戸減り約120戸に。「そば祭りは町のPR、観光振興のはしり。どうにか守り、町を盛り上げていかなければならない」。課題に向き合い、解決への模索を続ける決意を感じた。


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