北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

日曜談話室

野村和孝さん(34)*野村設計取締役*中古物件を安価で賃貸*収益より豊かな文化を 2019/06/09
のむら・かずたか
1984年旭川市生まれ。旭川東高卒業後、米国・コーニッシュ芸術大に入り、クラシックを学ぶ。ソロデビューし、地元の音楽大会で優勝したことも。2016年、家業の設計会社に入る。英語力を生かし観光情報も発信する。

 旭川市中心部などの古い建物を次々と買い取り、安い家賃で貸し、個性的な店の開業をサポートしている。こうした物件は7軒あり、シェアハウスの開設や古美術を販売する若手が活躍している。海外経験を経てUターンし、まちのにぎわいづくりを目指す野村設計(旭川)の野村和孝取締役(34)に地域への思いを聞いた。(聞き手・旭川報道部 尾崎良、写真・宮永春希)

 ――中古物件を相次ぎ購入していますね。

 「旭町の元歯科医院の建物は築60年近くなりますが、シェアハウスとして、運営されています。市中心部の平和通買物公園沿いの元菓子店は古美術品を売る店になりました。ちょっと離れますが、JR旭川四条駅近くの高架下に並ぶオール商店街ではギター販売店や古美術を売る店舗ができました」

 ――なぜ次々と取得して安価で貸すのですか。

 「多くの業者は高い収益を求めます。ただ収益だけを求めると、対象物件は高級ビルに限られてしまう。米国で音楽家として暮らしていた時、金が無いが、創作活動に意欲の高い人に多く会いました。最初は飯が食えなくても、後に有名になった人もいます。金が絡まないところに芽生える文化に触れました。ゴールは収益ではなく、創作や文化の豊かなまちです」

 ――ただ、まちの中心部は賃料が高くなるのでは。

 「日本では古い物件は貸せない、という話ばかり聞きますが、直せば使えます。物件一つ一つを『こんな人が入ればいいな』と想像しながら探します。自分の手で水道管を変え、便器も交換して改修し、賃料を安くします。借り手には建物の原状回復を義務づけません。家賃の半年分の前払いも求めません。借り手の初期投資が少なくなるようにすると、借り手が見つかるのです」

 ――人口が減り、どの自治体もまちづくりが課題になっています。

 「まちの内側の力を蓄えるべきです。商店街であれば、面白いコンテンツ(事業内容)の店があれば人が集まる。面白くするには地場産業を生かすことだと思います。いまは顧客がインターネットを通じて地球の裏側にも広がっています。私はUターン組ですが、戻って来て感じたのは、もっとまちならではの特徴と魅力をまとめ、人に伝えることが重要だということです。市民一人一人が広告塔なのです」

 ――7軒目の物件はどんな店になるのですか。

 「金銭を交わさずに物々交換する―。そんな店を自分でやりたいと思っています。皿を洗う代わりにモノをもらうなどの交換もできるのでは。お金を介しない取引をする実験場のような店に取り組んでみたいと思います」

*取材後記

 まちの将来を語る話しぶりから、豊かな発想力と若い人の力がうかがわれた。リスクを承知で従来の枠にはまらず、果敢に店舗開業を目指す姿勢はまさに「挑戦者」の言葉が当てはまる。他のまちでも目抜き通りで多くの空き店舗が並ぶ「シャッター街」を目にすることがあるが、挑戦者が新たなまちづくりの可能性を呼び込み、次世代のまちづくりを担う若手が育っていると実感した。


戻る