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しばた・のぞむ 1975年、岩見沢市生まれ。岩見沢西高、旭川大卒。札幌の学習塾グループでの勤務から2004年、旭川市内の石油販売会社に転職した。15年に「東鷹栖安部公房の会」入会。朗読会では安部公房が使ったシンセサイザーの音を交えるなど新しい表現を模索している。
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旭川の詩人を中心にしたグループが2017年12月に創刊した詩誌「フラジャイル」が3月末、5号目を発行した。72年間続いた旭川の詩誌「青芽」の昨年夏の終刊を機に、歩みを受け継ごうと創刊した新たな詩誌。フラジャイル代表で旭川の会社員、柴田望さん(43)に詩の魅力や旭川の文学事情について聞いた。(聞き手・相沢宏、写真・宮永春希) ――「フラジャイル」とは変わった名前です。 「3年ほど前、『青芽』代表の富田正一さん(92)=旭川在住=に高齢などを理由に終刊したいとの意向を伝えられ、後継詩誌の発行を打診されました。そこで英語で『こわれもの』を意味する『フラジャイル』を、詩人仲間と創刊しました。青芽は詩の繊細な世界を長年守ってきました。そのこわれもののような世界を次世代に運ぶ詩誌にしたいと思ったのです」 ――文学少年だったのですか。 「いいえ。高校からバンドに明け暮れ、ルー・リードなど60、70年代の米国のロックミュージシャンが好きでした。旭川大2年のころ文芸評論家の故・高野斗志美教授がロックと文学の関係にも造詣が深いことを知り、ゼミに入りました。現代詩の第一人者、吉増剛造さんの詩など、前衛的な詩も本格的に学びました」 ――詩は難しいイメージです。魅力は。 「文学での表現方法は小説、短歌など多くありますが、詩は特に形も自由なため、可能性が無限大にある。行の字下げなどを使って、文字や行の固まりを絵のように仕上げることもできます。ただ、概念的な作品は『どう受け止めたらいいのか』と言われることがあります。でもその時点で作り手と読者はコミュニケーションが取れている。受け止め方は人それぞれでいいと思います」 ――旭川はもともと詩が盛んだったとか。 「小熊秀雄(1901~40年)のほか、旭川育ちのプロレタリア詩人、今野大力(04~35年)、詩人の萩原朔太郎との交流もあった鈴木政輝(05~82年)などが旭川にいました。北海道詩人協会の発祥は旭川だったとも言われています。でも、今はどうでしょうか。高齢化が進んで若者はほとんどいません。会社では人事担当をしていますが、大学などで若者に趣味や特技を聞くと、漫画などのスピンオフ(外伝)など2次作品は得意だが、自ら作品を生むのは苦手なようです」 ――抱負は。 「『フラジャイル』を通じて旭川の詩の世界を盛り上げたい。『旭川にこんな詩誌がある』と多くの人に言われるようになれたら。そして、もっと若い人に詩の創作を体験してもらいたい。詩は敷居は高くありません。若者向けにフェイスブックなどでの詩作の発信もしています。一人でも多く若い人に詩に関心を持ってもらえればと思います」 *取材後記 「フラジャイル」はA5判で平均40ページ。第5号では同人らの詩作、高野斗志美さんの評論のほか、札幌で開かれた吉増剛造さんらの講演に自ら出向いて執筆した抄録も掲載。手作りの手の込んだ内容だ。仕事をしながらの作業は大変なのではとの記者の問いに「旭川を詩のマチにしたい」と静かに答え、情熱は限りないと感じた。詩誌はこども冨貴堂、ジュンク堂書店旭川店などで取り扱っている。1部500円。
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