北海道新聞旭川支社
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日曜談話室

星野利宏さん(56)*旭川市でフリースクールを経営*不登校支援にかける思い*社会の中の居場所残す   2018/10/30
ほしの・としひろ 
旭川市出身。大学で地理歴史などの教員免許を取得し、卒業後は地図会社に就職。退職後、学習塾経営や不登校支援の活動を始めた。教育活動以外にも、ランニングや異業種交流を目的として各種団体を立ち上げ、代表などを務める。

 不登校の小中学生を受け入れる旭川市のフリースクール「かむいサンビレッジスクール」(神居2の18)が開設5年目を迎えた。施設内には通学型の通信制高校「ヒューマンキャンパス高校旭川学習センター」もあり、約50人の子どもが通う。同スクールを経営する旭川学習センターの星野利宏センター長(56)に、スクールの取り組みや不登校支援にかける思いを聞いた。(聞き手・旭川報道部 前田健太、写真・舘山国敏)

 ――フリースクールはどんな子が通っていますか。

 「人間関係に悩んだり、授業など学校生活になじめなかったりして不登校になった小中学生です。沖縄に本校がある通信制高校の旭川校も併設しているので、小学生から高校生まで一緒に過ごしています。彼らはたまたま学校になじめなかっただけで、コミュニケーション能力が低いわけではありません。友人もつくり、楽しく過ごしています」

 ――子どもたちの普段の様子を教えてください。

 「(インターネットで英語の学習ができる)『eラーニング』をしたり、スクールサポーターズと呼ばれる外部講師の協力のもと、体育の授業をしたりします。キャリア教育を重視し、美容室のオーナー、イラストレーターら多様な職種の人と会う機会を設け、子どもたちの視野を広げるようにしています。中学生はフリースクールに登校したら、本来通う学校でも出席扱いになります」

 ――開設の経緯は。

 「1997年に始めた個別指導の学習塾が前身です。教育に携わりたいと思い、会社を辞めて始めました。塾経営の傍ら、不登校支援の活動も進め、塾には不登校の子も通うようになりました。これが、のちにヒューマンキャンパス高から旭川校の代表を打診されるきっかけにもなります。ただ、最初は楽しく指導できていましたが、あることでつまずきました」

 ――あることとは。

 「学習塾ということで、塾生たちの成績を上げることに気持ちが傾いていきました。結果、厳しい言葉ではっぱをかけるようなスパルタ教育になってしまい、塾に来るのを嫌がって、保護者の送迎の車から出てこない塾生もいました。そこで、こうした指導に対する反省もあり、2014年から完全にフリースクールとして活動を始めました」

 ――今後の目標を教えてください。

 「現行の学校教育になじめない子が実際にいる以上、フリースクールはその子の居場所になり続けなければならないと思います。活動の根底には有形無形問わず、何かを後世に残したいという思いがあります。せっかく設けたこのフリースクールを、いつまでも残したいです」

*取材後記

 インタビュー中は終始温和な口調。アルバイトを初めて体験した施設の高校生について、まるで自分のことのように楽しそうに話す姿が印象的だった。不登校支援に積極的に取り組む背景には、偏差値に重きを置く現在の学校教育への疑問があるという。社会には不登校に対する理解が不足している。星野さんの活動が、いまだに残る誤解や偏見の解消につながってほしいと思う。


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