北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

橋本秀昭さん(62)*「トロッコ王国美深」理事長*風感じながら森林浴楽しんで*誰もが楽しめる施設に 2018/09/02
はしもと・ひであき
1956年、美深町生まれ。美深酪農高を卒業後、仁宇布地区で実家の酪農業を引き継ぐ。「トロッコ王国」の開設に尽力し、2013年からは施設を運営するNPO法人「トロッコ王国美深」の理事長を務める。

 美深町郊外の仁宇布(にうぷ)地区にある観光施設「トロッコ王国」が7月で開設20周年を迎えた。1985年に廃止された旧国鉄美幸線(美深―仁宇布間21・2キロ)の線路往復10キロをエンジン付きトロッコで走る施設は、道内外からの客でにぎわう。施設の開設に尽力したNPO法人「トロッコ王国美深」の橋本秀昭理事長(62)にこれまでの道のりと今後への思いを聞いた。(聞き手・名寄支局 鈴木宇星、写真も)

 ――この20年間で、トロッコ王国は年間1万人以上が訪れる観光施設になりました。

 「開設当時は、ここまで多くの人に来てもらえる施設になるとは思っていませんでした。そのころは職員の給料もなく、ボランティアで営業していました。年々、来場者も増え、地元企業からの融資や町の協力で、施設のトイレ整備や枕木の交換ができました。多くの人の支えがあったからこそ、ここまで来られました。本当にありがたい」

 ――開設までには苦労もあったのではないでしょうか。

 「美幸線の廃止を残念がる町民は多かったです。その中から有志10人ほどが集まり、線路を活用できないかと知恵を出し合いました。馬をトロッコに引かせる案がありましたが、馬を飼うのは難しいなど反対がありました。私は若い頃、旧国鉄の保線区の知り合いに保線用のトロッコに乗せてもらったことがありました。それがきっかけでエンジン付きのトロッコを提案し、町などの協力で開設を実現させることができました。本格的に線路の活用策を検討してから開設まで約2年かかりましたが、熱意のある人たちが集まったからこそできたと思います」

 ――通算来場者数が間もなく20万人に達します。

 「今年は北海道命名150年、美深町開拓120年の節目の年。この施設も記念の年を迎えることができてよかった。来場者との交流を大切にしているのですが、以前広島県から1人で来たお客さんが『すごく楽しかった。今度は妻と子どもを連れて来ます』と喜んでいました。こうした声に励まされています」

 ――施設ではイベントも行っていますね。

 「これまでも(旧仁宇布駅の)プラットホームを使ってライブを行ってきましたが、今年は20周年記念事業として回数を増やし、町内外のバンドを招き、5回開催します。また、地域の子どもたちの楽しみが一つでも増えれば、との思いから、毎年8月には駅舎前の広場で、盆踊りも開いています。地域を盛り上げ、町民にとっても大切な場所になってくれればと思っています」

 ――今後はどんな施設にしていきたいですか。

 「今年は、来場者がくつろげるよう土日祝日限定で軽食を提供するお店を設けました。春は残雪、夏は生い茂る緑、秋は紅葉が見られる施設。トロッコを運転して風を感じながら森林浴を楽しんでほしい。子どもから大人まで来てくれた人が楽しんでもらえるよう工夫したい」


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