北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

ヒューマン

菅原しおりさん(20)*当麻町森林組合職員*道内女性で唯一の森林施業プランナー*50年後見据えた林業を  2018/06/17
 すがわら・しおり
1997年、旭川市生まれ。3歳から中学1年まで愛知県春日井市に住み、再び旭川へ。旭川商業高を卒業後、2016年に当麻町森林組合に就職した。今年2月に結婚し、旭川で夫と2人暮らし。趣味は休日に愛犬のプードル「ぷぅ」と散歩すること。

 当麻町森林組合(中瀬亘組合長)の菅原しおりさん(20)は、道内に175人いる森林施業プランナーで唯一の女性だ。プランナーの仕事は、森林所有者に代わり山林の管理計画を立てて提案すること。民有林の荒廃を防ぎ、森林経営が息長く続くよう森で働く菅原さんに、やりがいや目標を聞いた。(聞き手・旭川報道部 佐藤洋樹、写真・打田達也)

 ――森林施業プランナーとは耳慣れませんが。

 「組合員である森林所有者に、現地調査の上で山林がどんな状態にあるのかを伝えます。生育状況はどうか、現在売れる木の量がどれくらいで、どれほどの価値があるのか。そして今後50年の管理計画を立て、植林や下草刈り、間伐などの費用も見積もり、伐採した木を売ることで最終的にいくらの利益が上がるのかを試算して示します。納得いただければ契約を結び、所有者に代わって組合が森林整備を進めます」

 ――森林組合というと男性職場のイメージです。

 「母校の旭川商業高校の求人は事務系の仕事が多いのですが、森林組合からの求人が目に飛び込んできました。愛知県で暮らしていた子どものころ、野山で遊ぶのが好きでした。父親とカブトムシを捕ったり、友達と斜面に穴を掘って『秘密基地』を造ったり。それで受けてみようかなと。親に相談したら『いいんじゃないか』と背中を押してくれました」

 ――森林施業プランナーはなぜ受験しようと。

 「同期の男性職員が、就職1年目で組合長に勧められて受験すると、見事に合格しました。その姿を見て『同期に負けたくない』という気持ちが湧いてきたのです。2年目に組合長に『君も受けたらどうだ』と言われて挑戦しました」

 ――受験勉強は大変でしたか。

 「大変というより、知らないことが多すぎた、と気づかされました。例えば、枝がまばらだったり育ちが悪かったりすると光合成が進まず、樹木の生育が悪くなります。逆に枝が多すぎると節も多くなって木材の質が悪くなる。とても学ぶところが多かったのです」

 ――充実感を感じるのは。

 「現場を見て計算した収支が、見積もり通りにいった時です。木を伐採するにしても、どんな林業機械を使って、何人の作業員が何日かけて、どう作業すれば効率的かを現場の人たちと話し合って決め、費用を算出します。森林所有者に『こんなに利益が出せたんだ。すごいね』と声をかけられると、とてもうれしい」

 ――今後目指すものは。

 「50年後を見据えた林業です。当麻は行政が林業を支援する態勢が整っている町ですが、所有者の高齢化や相続を受けた人の関心の低下などで、荒れたままの山もあります。経験が浅いので、まずは当麻のどこに誰の山があって、林道はどう走っているのかといった現状を把握したい。そして、組合員以外の人にも計画的な施業の提案をして、当麻の山が樹齢のバランスの取れた森林になるよう尽くしたいと思います」


戻る