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せがわ・たくろう 1958年、札幌市生まれ。札幌西高から岡山大へ進み考古学を専攻。99年から旭川市博物館学芸員、2014年から館長。「縄文の思想」(講談社現代新書)のほか、第3回古代歴史文化賞大賞を受けた「アイヌ学入門」(同)など著書多数。
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アイヌ民族の文化、歴史を後世に伝えようと尽力した旭川市博物館の瀬川拓郎館長(60)が3月末で退職した。アイヌ民族史の専門家として19年にわたり学芸員を務め、映像や人体模型などを使って「人の顔が見える展示」を求め続けた。4月から札幌大教授として新たな道を歩んでいる瀬川前館長に、これまでの活動を振り返ってもらった。(聞き手・旭川報道部 尾崎良、写真・打田達也) ――最も思い出に残ることは何ですか。 「2008年に1階の常設展示室をリニューアルし、アイヌ文化を詳しく紹介する内容にしたことです。それ以前の土器や石器を並べる展示方法を変更。人体模型を使い竪穴住居の人びとの暮らしを再現したり、アイヌ語教室の様子や刺しゅうをしている姿を映像で流したりするなど、『人の顔』を意識して作業に当たりました。見せ物にするのかとの批判を心配しましたが、アイヌ民族の人々の協力で実現できました。民族衣装を見て『今でもこの服を着ているの』と話す子どももいた。ただ、今の暮らしを併せて紹介することで、偏見の解消につながったのではないでしょうか」 ――そのほかどんな成果がありましたか。 「東京や大阪、神戸など道外の修学旅行生が訪れてくれるようになりました。これはリニューアル以前にはなかったことです。アイヌ民族の文様のコースターやガマの茎を使うござ作りなど体験学習が人気で、子どもたちは『何を食べていたの。トイレはどうしたの』と興味を持ってくれました」 ――博物館の役目とは。 「博物館にある数々の所蔵品は市民の貴重な財産です。こうしたモノを通じて市民に文化や歴史を知ってもらう拠点が博物館。各年齢層に学びのニーズがあります。博物館の職員は、知識や技術を蓄え、子どもから高齢者までさまざまな要望に応える能力が求められます。博物館では最近、古いモノを見て会話することで認知予防につながる効果も注目されています」 ――昨年秋に「縄文の思想」を出版しました。 「アイヌ民族は広く交易し、開かれた民族であったことを書きました。本州各地で船で移動しながら漁を営んだ『海民(かいみん)』と交流したアイヌ民族がいたことを知ってほしい。両者には入れ墨や抜歯など縄文習俗が長く残ったなどの共通点が見られます。交流と変化の中で生きたアイヌ民族の新たな姿が見えてきました」 ――春から教壇で新たな道に踏み出しました。 「博物館で培ったモノから歴史を読み取る手法を学生に伝えたい。フィールドワークもしたいです。学生からどんな反応が返ってくるか、とても楽しみです」
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