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よこた・ひろき
1977年、滋賀県彦根市生まれ。静岡大、名古屋大大学院修士課程を経て2005年からフランスに留学。社会科学高等研究院で修士、パリ大学で博士号を取得。専門は仏の経済理論「レギュラシオン(調整の経済学)」。14年4月から現職。 |
旭川の家具産業を研究する気鋭の経済学者。ゼミの学生には、森から木を切り出すところから組み立てまで家具作りを経験させる。「単に研究材料にするのではなく、理論と実証で地域経済の役に立ちたい」と話す旭川大学経済学部の横田宏樹准教授(40)の研究室を訪ねた。(聞き手・旭川報道部 佐藤洋樹、写真・大島拓人) ――なぜ旭川家具の研究を。 「8年余りのフランス留学を終えて帰国して、2日後に旭川大で面接を受け、翌日採用が決まりました。大学時代から自動車産業を研究してきたのですが、旭川で続けるのは難しかった。家具産地だとは知らなかったのですが、旭川家具センター(現・旭川デザインセンター)で旭川家具と出合ったのです。気に入りました。3年おきの国際家具デザインフェアも開かれていました。自動車も家具も同じ『ものづくり』。地域経済への貢献を掲げる大学の理念とも合致していると、テーマに選びました」 ――旭川の家具産業の特性は何でしょう。 「第一印象は、デザインがシンプルでかつ格好いい。飽きが来ない。でも高い―かな。機械は使うが人間と置き換えるのではなく、職人さんの丁寧なものづくりで一つ一つ仕上げてゆくのが強みだと思います。メーカーによって多様性、異質性がある。ミズナラに代表される豊かな森林資源を背景に、古くはメーカーと問屋の分業体制が対立や利害を調整する機能を果たして業界がまとまり、市の工芸センターや撤退前の東海大も連携して地域産業として発展した歴史があります」 ――課題は? 「生産額が縮小しているのは、輸入物や『ファスト家具』に押されているだけではないと感じます。学生はおろか30、40代の市民でも旭川が家具産地であることを知らない人がいる。メーカーが『質の高さを分かっている人に買ってほしい』と考えていても、若い人は家具を生活の道具としか見ない。地域材を使い、旭川でデザインを勉強した人がデザインするといった地域社会とのつながりを復活させなければ、旭川で作っているという事実だけが残ってしまいます。そんな課題をしっかり認識している業界のため、産地の持続性につながる研究がしたいのです」 ――ゼミの学生に伐採やデザイン、加工までの家具作りを体験させました。 「家具産業は、企業・家計・行政がどう結びついているのか、資源を循環させ付加価値をどう与えているのかを学ぶ格好のテキストです。森林資源とデザイナー、作り手の魅力が価値をつくることや、その魅力と価値を感じ取る消費者を育てる『木育』の大切さを肌で知ることができる。何よりも世界を相手に戦っている経営者との出会いです。『無理』だとか『やめておけ』と言わず、『それ、いいんじゃないか』と言ってくれる人たちの人間力を学んでほしいと思います」
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